後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

日向坂46主演ドラマ『声春っ!』のこと。

 今年の4月から先月まで日テレ系で放送されていた日向坂46主演ドラマ『声春っ!』の感想文みたいなものを今更書きます。

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 このドラマは昨年の『DASADA』に続く日向坂46主演ドラマ第二弾、のといった触れ込みで放送されたわけですが、このドラマがね、良かった。私的に『DASADA』がめちゃくちゃ面白くてHuluで5周くらい観てBlu-rayも買っていたので、今回の『声春っ!』も期待して視聴していました。そして案の定面白かったのですが、『DASADA』ほど話題になっておらず「なんじゃいっ!」と思ったので感想文を書こうと思ったわけです。なんじゃいっ!

 『声春っ!』公式サイトのイントロダクションには、

沢山の夢と、沢山のバイバイの記録。

"夢"は、声にしないと伝わらない、届かないーー。

アイドルグループ日向坂46のメンバーが、声優を目指す少女を演じる。

きらめき声優学園で繰り広げられる、笑って泣ける、青春ドラマ!!

 と紹介されています。

 「沢山の夢と、沢山のバイバイの記憶。」。この一文が『声春っ!』を表しています(キャッチコピーなんだからそりゃそうなんでしょうけれども)。もちろんドラマは面白かったのですが、それは「ツラい」を含んだ面白さでした。もしかしたら『DASADA』よりも観ていてしんどい(めいこちゃん的に言うならばつんどい)シーンが多かったかも。

 もちろん日向坂46のグループイメージもあるので、ところどころコメディであったり、一応はハッピーエンドを迎えるのですが、それでも観ていてなかなかぶっ刺さる部分が多くてしんどかったです。コーティングしきれない辛さがにじみ出ているようなドラマでした(それ含めて面白かったんですけどね)。

 ストーリィとしては、タイトルにもあるように主人公の日ノ輪めいこちゃん(佐々木美玲さん)が、漫画家の金閣寺炎上先生(竹中直人さん)の作品のアニメ化&声優オーディションを知り、そのためにきらめき声優学園に通い声優になるまで、を描いたドラマです。その声優学園では元気いっぱいの天道まなちゃん(丹生明里さん)や高飛車な尼崎あまねちゃん(渡邉美穂さん)と出会い、仲良くなったりケンカしたりするわけです。でも、めいこちゃんは上手く喋れないというコンプレックスを抱えていたり、知られたくない過去を持っている子がいたりと、それぞれが問題を抱えています。このへんは『DASADA』と似ている設定かもしれません。ただ、『DASADA』ではそのコンプレックスを認めてくれる仲間がいて、そのおかげで自分自身もそのコンプレックスを認められるようになっていきます。おそらくそれが『DASADA』の大きなテーマの一つだったかと思います。

 (このことについては過去に書いたのでよろしければ)

 

sibainu08.hatenablog.com

 

 ですが、『声春っ!』は徹底的にコンプレックスと自身が向き合わされます(仲間がいることで解決につながることもありますが)。舞台が声優学校なので、オーデションに自分だけ受からないこととか、妹のように慕ってくれていた子が先にデビューしてしまったり、寮母さんは声優の仕事がなくて伸び悩んでいたりと、声優学校特有の悩みやコンプレックスが多く登場します。そして主人公のめいこちゃんの場合は特にエグくて、人と話すことが苦手だっためいこちゃんを唯一認めてくれていた校長先生が亡くなったり、男に騙されたり、そしてとうとう声優学園を辞めてしまうまで至ります。もうね、エグいエグい。

 そして、それらを乗り越えるために、色んなこととバイバイすることになります。バイバイすることが唯一の解決手段と言っていいでしょう。コンプレックスとも、友達との関係性とも、自分の過去とも、そして肯定できなかった自分自身とも。でも、きっとそれが夢を追うことの辛さであり、尊さでもあるのかもしれません。声優学校が舞台ですが、それだけに限らず、生きているだけでも人間は色んなモノや人と別れることがあるでしょう。そもそも何かを選択する事自体が、選ばかなかったもう一方の選択肢と別れることです。そしてそのバイバイが正しい選択なのかどうかなんて、その瞬間はわからないし誰も保証してくれません。さらには思い描いていた自分の夢とすらもバイバイしなくてはならない事だってあるわけで、なんというか、「生きることっとしんどい(めいこちゃん的に言うならつんどい)なぁ〜〜〜」としみじみ感じさせられるドラマでした。一応、ドラマとしてはなんとかハッピーエンドを迎えていたけれども。

 そして、主題歌がとんでもなく素晴らしいのです。

 


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 ドラマ主演のみーぱん(佐々木美玲さん)とにぶちゃん(丹生あかりさん)がWセンターの楽曲。素晴らしいですね。MVが美しすぎて涙出そうになります。ちょっと達観して過去を振り返る歌詞は、誰にでもあったであろう、がむしゃらだった頃の気持ちを想起させます。『DASADA』の主題歌『青春の馬』はひたすらに前向きな曲でしたが、『声の足跡』はまた違った角度で、ちょっと大人びいた歌詞もめちゃくちゃ良いです。どちらも青春を肯定してくれる応援ソングですが。

 なにより、『声の足跡』というタイトルがとても好きです。「足跡」は自分の後ろに残っていくものですが、「声」は自分の前に向かって出るものです。前(未来)に向かってはき出した声が自分の足跡(過去)を形成していくという図が、なんだかエモーショナルです。結局、立ち止まってしまった時に信じられるのは自分の声であり言葉なんでしょう。夢を声に出すということはなかなかエネルギーの必要な行為ですが、でも、その声は自分を支えてくれる唯一の味方になってくれるのです。そして声は空気を震わせ自分自身を共鳴させ、熱を発生させてくれるわけです(そこまで考えての曲名かは知りませんが)。もうね、刺さりまくって涙が出そうでした。

 振り付けもドラマティックで素晴らしいので、もうちょっと話題になってもいいんじゃねぇかなぁ、と私は思うのでした。先日の『W-KEYAKI FES. 2021』でのパフォーマンスも素晴らしかったです。そんなドラマ『声春っ!』と主題歌『声の足跡』についてでした。Huluで観られます。