後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

オーバーシュート重大局面って何よ

 3月25日。水曜日。今日も日中は暖かい一日でした。何も考えずいつもの感覚で研究室に向かいましたが、どうやら今日は卒業式があったようで、やたらめったら構内が混んでおりました。卒業式といっても、このなんやかんやのご時世ですので式典自体はカットされていて、研究科ごとに学位記を貰うだけのコンパクトなものになっていたそうですが。それでも、写真をとったり研究室に卒業生が集まったりなんやかんやで久しぶりに大学がにぎやかになっていましたね。そのせいでラボに近い駐車場が全く空いておらず、かなーり遠いところに停めなければならなくなってしまいました(にこにこ)。

 夜に都知事の記者会見がやっていたので、後からその記事を流し読みだけしました。その中で出てきていた「オーバーシュート重大局面」の文字列。なんだそりゃ。どうやら「オーバーシュート」が「感染爆発」というニュアンスで使われているようなのですが、あまり馴染みのない使われ方だったので一瞬「?」となっていました。いや、「オーバーシュート」という言葉自体はもともとあって、おそらく色んな分野でも使われているのですけれど、ちょっとその語感ありきで使われているんじゃないか、という気がしてなりません。生物学・生理学の分野で「オーバーシュート」といえば、神経細胞とか筋細胞なんかで活動電位が発生して電位が上昇する(脱分極する)際に、その細胞膜の電位が細胞外の電位を超えてしまった部分(正の電位の部分)のことをいいます(高校生物とかでも履修するのかな)。ややこしいようですが、つまりは「オーバーシュート」自体には「通り越す」とかその程度の意味合いしかないのです。それを「感染爆発」というニュアンスで使われるのは、ちょっと、いやかなりモヤモヤを感じてしまいます。

 また、「オーバーシュート」だけでなく、「クラスター」も「集団感染」みたいな感じの意味合いで使われているのも気になるところです。そもそもの「クラスター」という言葉には「群れ」とか「集団」という意味しかありません。生態学や分子系統学の分野では「クラスター解析」という統計方法がよく使われていますが、これは色んなものが混ざり合っているでっかい集団の中から似ている者同士を集めてみましょう、という解析手法です。要は仲間集めです。なので、「クラスター」という単語自体には「感染」なんて意味は含まれていないのです。それを、さも緊急事態を煽っているかのように仰々しい言い回しで使われているものですから、違和感を覚えるというか、なんだか気持ちの悪い使われ方だなぁ、とここ最近の一連の報道を見ながら思うのでした。

 そんな、神経質おじさんのような細かい話でございます。ロックダウンに関しては完全に初耳でしたが「封鎖」ということなんですね。へぇ…