後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

団欒の象徴シチュー

 シチューって不思議な料理だ。あんなに白くてドロドロしているのにしっかり味がついている(しかも美味しい!)時点でだいぶ不思議なわけだけど、今回の焦点はそこではない。「シチュー」と聞いてまず連想されるのは暖かな食卓な光景だ。シチューほど「家庭料理の代表」というラベルがべったり張り付いている料理も他にないだろう。しかしよくよく思い出してみると、私の家ではシチューが食卓に並んだことがなかった。シチューを食べていた記憶の、そのほとんどは小中学校の給食の時間である。時間が決められている無味無臭の機械的な配膳、全員が一律のメニューを食べるという最適化された日本教育。そこには暖かな家庭の雰囲気は一切感じられない。しかしそれでも、「シチュー」という料理名から紐付いて生成されるのは、やっぱり「一家団欒」のイメージなのだ。雪が降り積もるほどの寒い日の夜、お父さんは会社から帰って来てコートについた雪を振り払っていて、キッチンでは鍋のコトコト音をBGMにせわしなくお母さんが動き回っている。食卓に並ぶシチューの入りの大きな鍋には必ず花の模様が入っていて、春のパン祭りでもらったような平たい深皿に取り分け、各々が木のスプーンなんかを使って食べている。そして食卓の傍らには毛の長いでかい犬。そういうイメージが思い浮かぶのだが、これは偽記憶だということを今の私はもちろん知っている。なぜなら私の家は自営業だったし母親もいなかったし、そもそも始めに書いたようにシチューが食卓に並んだことが一切なかったから。明らかに嘘の記憶なのだ。
 なぜこんなにもシチューに「一家団欒」のイメージがつきまとっているかというと、やはりテレビCMの力だろう。シチューのルゥのCMでは、必ずといっていいほど幸せな一家が登場するし、食べる季節は冬に限定されている(考えてみれば夏に食べてもいいだろう)。それが脳内に強固なシチューのイメージとして植え付けられているのだ。一種の刷り込みともいえる。

 これは別にシチューに限った話ではない。「家庭の味」というものを想像する時、人は本当に自分の家で食べてきたものをイメージしているかと思うと、そうではないのかもしれない。勝手にメディアによって作られた「家庭の味」を自分の記憶だと認識していないだろうか。例えば、私の家では毎朝味噌汁が出ていたのだが、私はこの味噌汁が嫌いだった。正直に言って、私の家の味噌汁は美味しくなかったし、それでも毎朝出てくるから、心底うんざりしていたのだ。にもかかわらず、ご飯を残すことが許されない家庭だったから、お椀によそわれた味噌汁を親が見てないうちにこっそりと鍋に戻して逃げるように家を出ていた。その確かな記憶がある一方で、ドラマや映画やCMで見かける味噌汁の「落ち着いた和の朝食」のイメージに支配されているのも事実である。メディアによる刷り込み力の強さと、それに対する人間の脆さを実感する。
 あんなに嫌いだった味噌汁に対して幼少期にもっていた嫌悪感は、いつの間にかすっかりなくなっているのだ。子供の頃に苦手だった食べ物が成長すると大丈夫になるという、誰もが体験するだろう事象にもメディアの刷り込みが一枚噛んでいるかもしれない。寛容ではなく、鈍感になっているのだ。大人になるということは、そうやって順応していくことなのかもしれない。だからこそ、どこにでも入り込む経済主義から逃れ人間性を取り戻さなければいけない。操作された偽記憶から、真のシチューのイメージを更新しなくてはいけない。だから私はシチューを作ることにしたのだ(要するに初めてシチューを作ったという話です)。
 シチューを作るといっても難しいことは何一つない。具材はほとんどカレーと同じだ。違うのは牛乳くらいか。スーパーでシチューのルゥもたくさん並んでいることにビビってはいけない。カレーならキーマとかシーフードで味がかなり違うのでルゥのバリエーションがあることにも納得だが、シチューはシチューだろうが。だからビビってはいけない。適当にルゥを選び買って帰る。The シチューを作るのだから、具材もシンプルで良い。鶏肉、じゃがいも、玉ねぎ。それで十分なのだ。冷凍庫にブロッコリーが残っていたからそれを足しても良いだろう。カレーと同じように炒め、水を入れて煮込むだけ。大事なのはルゥのパッケージの裏側に記載されている作り方を忠実に守ることだ。メーカーを信じること。アレンジなんていらないのだ。私たちはメーカーに飼い慣らされている存在なのだから。

 パッケージ裏面の作り方通りの分量の具材を、作り方通りの時間で煮込む。火をとめてからルゥを入れるのは、温度を下げることでルゥに含まれる小麦粉(デンプン)が糊化してダマになるのを防ぐためだ。オーケー知っている。料理は科学だ。

 そして時間通りに完成し、蓋を開けて確認する。湯気とともに美味しそうなクリーミィな匂いがふんわりとキッチンに充満して…と、ここまでは良かったはずなのだが、一つだけ問題があった。ブロッコリーがすべて溶け、跡形もなく無くなっていたのだった。お玉でかき分けてもかき分けても見つからないブロッコリー。そうか、ブロッコリーってシチューに入れると無くなるんだな…(鍋にぶちこむのが早すぎただけなんでしょう)硬いはずの茎の部分は全く見つからず、頭の緑色のふさふさした部分(ちなみにあそこは蕾)はバラバラに分解されてシチューの表面に散らばっていた。その様子がコバエ取りに集まって浮いているコバエの大群そのものだった。なんて気持ち悪い見た目だろうか。とりあえずお椀によそって食べる。味は申し分ない(なぜならレシピ通りだから)。ただ何度も言うように見た目が最悪だ。ご飯にかけたらコバエのたかる三角コーナーそのものだった。本当に悔しいね。

 一家の団欒の象徴であるシチューが、ゴミ屋敷に住む孤独な人間のイメージに更新された瞬間だった。

 

深夜散歩・怒・イーガン

 4月7日。木曜日。日中は20℃を超える暖かい一日でした。これぐらい暖かくなると、深夜の一人散歩も苦になりません。家を出た直後はほんのりと肌寒いんですけど、歩いているうちにちょうど良くなります。深夜徘徊の捗る季節の到来ですね(職質待ったなしです)。散歩をする時はだいたいウォークマンスマホじゃなくて!)で音楽を聴いているんですが、未だに好きなバンドの曲が流れるとちょっと泣きそうになります。最近だとピロウズがやばかった。こういう感覚は中学生の頃から変わらないなと呆れつつ、忘れてはいけない感覚でもあるのだと思うのでした。「ダセェな!」と言われやすいし自分でも言っちゃうけれども…

 さてそんな木曜日。研究室の引っ越し作業が近いうちにあるので、荷物をまとめなくちゃいけないのですが、面倒で進んでいません。THE 怠惰。今日もパソコンに向かって延々と作業だけして帰ったのでした。

 帰りに本屋に寄って、文藝(雑誌)の最新号を買いました。他の文芸雑誌もそうですが、別に毎回決まって買うわけではなく、面白そうな特集をしてるか好きな作家が寄稿しているかが購入の決め手になっています。文藝は季節ごとの年4回発行されているのですが、購入頻度は2/4です。同じように、SFマガジンも2回に1回(隔月発行なので年で3冊)、文學界は3回に1回(毎月発行なので年4冊)の頻度です。文芸雑誌以外だと、日経サイエンスが2回に1回(年6冊)。もっと少ない頻度で、小説現代子供の科学、実験医学、アイドル雑誌諸々(BUBKAとかBLT、IDOL AND READなどなど)を不定期に買っています。それ以外にも突発的に購入するものもあれば、所属している学会からは定期的に雑誌が送られてきているので、雑誌ばかり溜まっていきます。今の所処分しなくても済んでいますが(田舎なのでね)、捨てるときを考えると今から憂鬱です。

 

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 閑話休題。今月発売の文藝最新号のメインの特集は『怒り』。もう見た瞬間買っちゃいましたわ。なんて面白そうな特集を…!またメインの特集以外にもグレッグ・イーガン特集もあったし(これも決め手です)。しかしこのグレッグ・イーガン特集ですが、「SFマガジン責任編集」という、別の出版社(早川書房)が河出書房新社の雑誌でやってることがちょっとした変わり種で、ツイッターでもそれぞれの出版社がそこを猛烈にアピールしていました。しかし個人的にはそういう部分を過剰にアピールされてしまうと冷めてしまい「ずれてんなぁ…」と思ってしまったのでした(私自身がずれている可能性もあります)。

 あと、このイーガン特集、内容はまだ読んでいないしそれ自体は楽しみなんですが、扉絵が鬼ダサかったです(内容とは無関係)。

 

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 ね?鬼ダサいでしょう?(内容とは無関係)「なんやこのセンスは…」と目を疑いました(内容とは無関係)。GUCCIの例のカタカナロゴの腕時計を見た時のような気持ちになりました(内容とは無関係)。

 そういう一日でございました。

『僕なんか』

 先日の4月4日に日向坂46さんの7thシングル『僕なんか』のMVが公開されました。先月末に行われた「3回目のひな誕祭」で初披露され、その4日後にMV公開。さらにその間には渡邉美穂さんの卒業発表があったり、今日に至ってはグループ内で新型コロナウイルスの集団感染が発表されたりと、なんとも怒涛の1週間です。新型コロナウイルスの感染については、ライブで体力も免疫力も低下していたことでしょうし、十分注意していても罹る時は罹るものですから、仕方ないものだと認識しています。なので、快復を祈るばかりです。

 さて、公開されたばかりの『僕なんか』。今回も素晴らしい作品となっていました(毎回言っているから説得力ないけれど、いやでも本当に素晴らしいの…!)。

 


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 もうすでに多くの方が感想や考察を書かれていますが、MVのメインテーマはセンターを務める小坂菜緒さんの復帰でしょう。冒頭、切ないピアノのイントロとともに、部屋で一人パソコンに向かう小坂さん。画面には日向坂のメンバーが踊る映像が流れており、そこに小坂さんが建物や街などのオブジェクトを配置していきます。メンバーの踊る映像を始めは眺めているだけだったのですが、だんだんと口ずさみやがて自らも体が動き出し、引き込まれていきます。

 

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 そしていつの間にか画面の中に取り込まれ、メンバーと小坂さんが合流し、全員で踊りだします。

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 合流するまでは、小坂さんもメンバーも精悍な表情だったのが、合流することで笑顔となり、そして現在の日向坂の22人のすべてのメンバーが揃う、というストーリィとなっています。

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 色んな考察を見かけましたが、「小坂さんの精神世界」というのが個人的にしっくりきました(別に、何を感じても自由なんですがね)。前回の『日向坂で会いましょう』の最後に今回のシングルのフォーメーション発表があったのですが、その時のインタビューで小坂さんが「休養している期間、テレビやライブで活躍するみんなを見て、私がいなくてもいいんじゃないかなと思ったけども、定期的に連絡をくれるメンバーもいて、そういう子たちが大好きだから、ここに戻ってきて新しい自分としてまた始めから進んでいきたい。(日向坂46の)次の新しい幕開けという面で、日向坂46を支えられる人にもう一度なりたい」と話されていました。もうね、その言葉がすべてなのでしょう。

 MVでも、始めは小坂さんが自分のいないグループを外側から一人で眺めていたのが、メンバーと合流することで「ここが帰る場所である」ということに気づき、新しい世界が広がり、最後には「僕なんか」を捨てられる(その決意をする)。

 あと、ラスサビ前ぐらいの、メンバーとつないでいた手をもう一度固く握り直すシーン、そして自分がデザインしていった街並みが消え去っていくシーンが印象的でした。自分が勝手に思っていたこと(それこそ曲タイトルの「僕なんか」!)は幻想であり虚像であって、でもそんな世界で消えずに残る確かなものはメンバーとの繋がりであるということ。その仲間たちと共にいることで、夜が明け真の世界が拡張されていく。まさに、これまで日向坂46がその歴史の中で大切にしてきた精神そのもののように感じました。

 

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 素晴らしいMVでございましたし、改めて、休養も復帰も卒業も、そのすべてが応援している人を感動させる物語になりうるという、日向坂46のグループとしての生き様の美しさと尊さを感じたのでした。

 

 あと、私の好きなシーン。

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 ここの東村芽依さん(めいちゃん)(最強)(天使)(五歳児)(奈良のチーター)(猫)が最強に可愛い。私は見逃しませんでしたとも。「めいちゃん上手に踊れているねぇ偉いねぇ〜」って気持ちになりました。お小遣いあげたい。

 

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 あと、冒頭の小坂さんのいないメンバー21人が画面の中で踊っているシーン。このキャプテン佐々木久美さんの表情がすごく素敵で好きです。「儚い」って辞書で調べたらそのままこの画が出てきてほしい。

 佐々木久美さんといえば、これもフォーメーション発表時の話になるのですが、そのときの映像で、復帰されたばかりの小坂さんとシングル表題曲初フロントの3期生上村さんの手を握っていたシーンが話題となっていました。

 

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 キャプテンとして「大丈夫だよ」と寄り添ってあげているその姿が素晴らしく素敵なのですが、それだけでなくて、佐々木久美さんご自身も二人に寄り添ってもらっているのではないか、と思うのでした(フォーメーション発表後のインタビューで「私なんかがフロントで大丈夫かな日向坂に迷惑かからないかな、そういう気持ちです」と話されていたのもあって)。しかしこの寄り添い寄り添われる関係というのが日向坂さんの強みでもあり、それを強く感じられるシーンでございました(あと佐々木久美さんのフロントメンバー入りが私は本当に嬉しいのです…!)。

 まだ表題曲しか発表されていませんが、5月11日発売予定の7thシングル『僕なんか』。今からとても楽しみでございます。

 

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 最後に、書かなくても良かった余談。MV前半でプログラミングをしている小坂さんのシーンを見て、『ナゼー』のMVでパソコンをリズミカルにぶっ叩く河田陽菜さんの画をほんのりと思い出しました。

 

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 比較してしまうと、河田さんのお気楽情報処理部部長感がすごい(大変キュートであるのは違いないけれども)。

 

買い替え時・フラワーズ・トポロジカル

 4月4日。月曜日。関東地方では雨が降っていて気温も低かったそうですが(朝のラジオ番組で東京の天気知りがち)、私の住んでいる地方は終日良い天気でございました。午前中から研究室へ。今日から新学期だと思い込んでいたのですが、大学構内は混んでいませんでした。ちゃんと把握していないけれど、違ったのかしら。新学期が始まると駐車場も混みだし、不本意にも遠くのところに止めないといけなくなるので警戒しているのです(混む前から行けばいいだけなんですけれどもねぇ…)。

 私自身としては来週から新年度の講義が始まるので、その準備をしていました。なんの問題もなく完成。あとの残った時間は相変わらず論文をコツコツと書いていました。そんなことをしているうちに夜になっていたという、なんとも振り返り甲斐のない一日ですが、もう慣れたものです。

 作業をしている間は(可能な時は)だいたいラジオを聴いているのですが、この4月から始まった文化放送の新番組『おとなりさん』の月曜パーソナリティがアルコ&ピースの平子さんなので、午前中はずっと聴いていました。TBSラジオの『DCガレージ』とはまた違うテンション感と声のトーンで、とても聴き心地良いです。末永く続いてくれますに…

 家で使っているメインマシンのMacBook Proがそろそろ寿命っぽくポンコツ化しているので新調したいなぁ、と1年くらい思っています。どれぐらいポンコツかというと、常時電源につないでいないとみるみるうちにバッテリィが減っていってしまう程度に。まるでノートパソコンの意味がねぇ。バッテリィが搭載されているであろう裏の部分もほんのり膨らんできていて、水平に置いてもガタガタするし。2014年頃に購入したものなので、さすがに買い替え時なのでしょう。しかしながら、どうも今年度は他にも色々とお金がかかりそうな予感がするので(そしてだいたいこの類の予感は当たる)、おいそれと購入に至れないでいます。何をするにも金がねぇ。

 さて、夜になって研究室を出て、時間があったのでタワレコに寄ってASIAN KUNG-FU GENERATIONの新アルバム『プラネットフォークス』を買って帰りました。

 

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 今年でアジカンは25周年ということなのですが、そのうち20年近くは追っています(一番最初は小学中学生くらいで、そこからCDはすべて買い続けています。ライブは近年は行けてないけども…)。それにしても買った後に気づきましたが、前回のアルバム『ホームタウン』から3年以上経っているのね。早いなぁ、空いたなぁ。

 新アルバムということなんですが、そのうち6曲ほどはすでに先行発売されているので、新曲としては8曲でしょうか。そもそも全14曲ってのもアジカンにしては珍しいです(ありがたい)。

 まだ全体を通して1周ほどしか聴いていないのですが、アジカンらしいロックな曲(それもあの頃の!)もあれば、シティポップっぽい曲も人間讃歌もあって、はたまた別のアーティストとのコラボ曲もあったりと、バラエティに富んだアルバムになっているなぁ、という第一印象です。ド名盤だぜこりゃ。特に、アルバムを締めくくる最後の曲『Be Alright』は、なんか知らんけど涙がこぼれ落ちそうでした。この今の時代、混沌に陥りつつあるこの世界で、「大丈夫だよ」って言ってくれるのはいつだって歌なんだろう。ネガティブで後ろ向きな事象に私たちはつい目を背けたくなるけれども、それらを冷静に直視していて、そして紡がれる言葉には必ず希望が込められている。それがアジカンであり後藤正文なんだろうな。そう思わずにいられないアルバムでございました。

 また個人的な話ですが、つい昨日の日向坂46渡邉美穂さんの卒業発表と、それ以降次々とアップされる他のメンバーの濃度の濃いブログの影響を私も少なからず受けてたせいか、『フラワーズ』がぶっ刺さりました(こちらはもともと先行リリースされてましたけど)。

 


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 (そういう意図が作り手になかったとしても)なんでもかんでも照らし合わせてしまうのはヲタクの悪癖。

 

ーーー

 最後に全くの別件で、最近読んだ本の話。最近は時間がなかなかとれないので読書スピードも落ちているのですが、長谷川修司『トポロジカル物質とは何か』と最果タヒ『少女ABCDEFGHIJKLMN』を読みました。

 ブルーバックスと詩人による少女小説という、なんとも食い合わせの悪そうな2冊を交互に読んでいました。『トポロジカル物質とは何か』は面白かったです。物性化学に関してはほとんど知識がなかった(大学時代の教養課程の化学の講義でちょっと触れた程度)ですが、ちょうどよい難しさでした。ブルーバックスって一般向けのシリーズなのに、たまに「誰が理解できんねんムズすぎるやろ阿呆ちゃうか」って難易度のものがあったり、自分の専門に近そうなタイトルで気になって買ってみて「簡単すぎたな、目新しいこと書いてなかったな」と、自分のレベルとずれてしまうことがよく起こります。ですが、この『トポロジカル〜』は私にとってちょうどよいレベルでした。『少女〜』は私にとっては微妙だった。最果タヒ氏の作品のうち、小説作品は『星か獣になる季節』しか読んだことなかったけど(あと詩集はいくつか)、『星か〜』のほうが面白かったな、と思いました。別に比べるものでもないし、たまたま私がそう受け取っただけですがね。ちなみに氏のエッセイはどれも好きです(特に『好きの因数分解』)。

 

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 しかし相変わらずラジオとか音楽とか読書とか、つまらなそうな奴の趣味欄みたいな日記だなぁ…

 

やさしさが邪魔をする

 4月3日。日曜日。朝からほんのりと雨が降っていた一日。しかし気温は高かったので過ごしやすかったです(湿度高めなのは仕方ない)。

 朝6時ごろ、自動車の防犯ブザーをうっかり鳴らしてしまい激焦りの朝でした。早朝から住宅街にけたたましく鳴り響くブザー。その横で狼狽えるへなちょこ野郎。人生の中でも5本の指に入るレベルの頼りなさっぷりを発揮していました。自分で鳴らしてしまうパターンはだいたいの場合、キーレスエントリーで車をロックして(ボタン押すやつ)、開ける時に物理キーを使ってしまった時とかです(普通は鳴らさない)。なので、「(自分で鳴らすなんて)そんなバカおらんやろなんで自分でカギの掛け方忘れてカギがちゃがちゃすんねんw」なんて思っていました(ど阿呆)。実際に鳴らしてしまうと激焦るものです。ブザーの止め方がわからなくて(ボタンでロックするかエンジンを始動させれば良いだけ)、右往左往していました。実は数年前にも一回やってしまい、そのときに止め方を調べてバッチリ覚えていたはずなのに、すっかり忘れていたのでした。

 こういう数年に一回ぐらいの程度で発生する事象は、その時は対処法を覚えるのですが、いつの間にかすっかり忘れてしまうので駄目ですね。その結果、毎回対処法を調べる羽目になっています(そして忘れる)。ハンドルロックの解除の仕方も忘れるし、確定申告の書き方も忘れるし、Namlockの解除の仕方も忘れます(頻度が多くなる順番)。

 そんな最悪の朝でしたが、今日は一日中家で過ごしました。研究室はどうやら建物がセキュリティ工事とのことで終日入れないようです。もしその忠告を無視して行っていたら、そこでも防犯ブザーを鳴らしていたことでしょう(トラウマ)。

 家で本を読んだり資料を作ったり、お買い物に行ったりしていました(また本を買った)。朝のやらかしを除いて平和な一日です。

 

 

 …という、クソほどどうでもいい日常のことから書き始めたのも、つい先程の日向坂46の渡邉美穂さんの卒業発表がショッキングすぎたからです(動揺を紛らわすためのほのぼの日記入り)。

 

 

 いやはや、びっくりしましたし未だに感情が追いついていないです。落ち着こうとコーヒーを入れてみるも味がしねぇ。今振り返ってみればこれまでにブログやラジオ(Tokyo FM『日向坂46の余計なことまでやりましょう』)で、卒業を思わせるようなことを書かれたり話されていましたが(それも渡邉さんの優しさなのでしょう)、いやでも、そうかこのタイミングかマジかぁ〜〜〜となっています。感情の堂々巡り。そりゃ、アイドルというのは永遠に続く存在ではないですし、いつかは必ず「卒業」がやってくるものです。それはファンが、いつもライブや歌声や表情や存在そのものから元気をもらっている代わりに引き受けた業であり代償なのだと思います。そんなことは分かっていると思っていたはずなのに、いざ直面してみると、全く準備できていなかったものだな、と実感します。

 なんというか、久しぶりにこういう感覚になりました。めちゃくちゃ寂しいですけど、ご本人もブログで書かれているように前向きに捉えて、歩まれる未来を応援すべきなのでしょう。アイドルという、観ている人・応援している人に感動やエネルギーを注いであげられる人は、アイドルを辞めた後も笑顔でいられる世界じゃないとおかしいですもの。

 先日の東京ドーム公演での『抱きしめてやる』。センターを務めた渡邉さんの鬼気迫る迫力とキレッキレのダンスパフォーマンス、めちゃくちゃカッコよかった姿が焼き付いています。2期生の中心的存在で、番組(テレビもラジオも)では要所要所で展開を作って盛り上げていて、がんばり屋で、自分の考えをしっかりと持っていて、それを曖昧にせずファンに向けて伝えてくれる。そんな渡邉美穂さんが進む未来が、明るく素晴らしいものでありますように。そう願う夜です。

 いやでもやっぱ寂しいってまだ全然整理できてねぇってぇ〜〜〜〜

 


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エイプリルフール&セサミストリート

 4月1日。金曜日。日中は暖かく過ごしやすかったものの、夕方は肌寒かった一日でした。着ていく服装を間違えたため、夕方はしんどかったです。ほんと、「春なのにまだ肌寒いなぁ」なんて毎年100回くらい言ってますわ。

 エイプリルフールというものに対して心が動かなくなっていることに、加齢を感じます。それこそ子供の頃なんかは「嘘をついていい」ということに特別感を感じていて、友達に壮大な嘘をついてやろうと企んでいました(で、結局大した嘘もつかずにその日を終えていたのも微笑ましい記憶です)。また、2000年代後半ごろにはインターネット上で様々なサイトや企業がエイプリルフールに乗っかった嘘企画を発表していて、その1つ1つにワクワクしていました(血眼になってサイトを巡りまわっていた)。

 しかし、今となっては企業のスベってる粗い嘘企画を見ても「きっと上層部だけが盛り上がって今年のエイプリルフール企画案だせって言って、現場は渋々会議とか重ねた結果なんだろうな」なんて、いや〜な見方ををするようになってしまいました。まぁ、実際のところスベっているものも多いのですけれども(だからその見方が良くない)。

 こういった嘘の受け取り方の変化を、「大人になってしまったから」と言い切ってしまうとそれまでなんですが、おそらくもうエイプリルフールの対象じゃないのでしょうね。それは自覚すべきで、エイプリルフールを楽しんでいる人もいるわけだから、例え「つまんねぇな」と思っていたとしても、それを表立って言うべきではないのでしょう。エイプリルフールに限らずハロウィンやクリスマスも同じで、己が楽しめなくなったからといって、急に難癖をつける側にはならない方がよろしいと思うのです。嘘を楽しんでいたあの頃の自分を否定することになってしまうので。自戒のために書いています。

 

 4月1日の22時にアップされた、セサミストリート✕日向坂46のTHE FIRST TAKEの動画がめちゃくちゃ良いです。


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 もうずっと見ちゃってる。日向坂さんからは歌唱力抜群のメンバーが選ばれているわけですが、動画を見た感想として「歌上手い!」よりも先に「楽しそう!」がくるのがこのコラボの素敵なところだと思います。そもそも音楽ってこういうことなのでしょう。好きな歌は理由もなくなんとなく口ずさんでしまうものですし、楽しくなってつい体が揺れてしまう。そこに歌の上手い下手は関係ないのです。マジで令和のWe Are The World。なんちゅう幸せ動画なんや…昨日の東京ドーム公演の影響が続いてることもあって、ちょっと泣きそうにすらなってしまったもの。

 あと、動くセサミストリートのキャラクタを久しぶりに見たのですが、子供の頃にビッグ・バード(動画には出てきてないけど)がめちゃくちゃ好きだったことを思い出しました。あとクッキーモンスターがバリバリとクッキーを砕きながら食べる様子がやたら怖かったことも(もちろん今はそんなことないです)。今の今まですっかり忘れてたけど、幼少の頃の記憶の奥底にはしっかり残っていたので、セサミストリートってすげぇコンテンツなんだな、と再認識しました。久しぶりに見たくなったなぁ。まだセサミストリートってNHK教育テレビでやってるのかしら…

 そんな、日向坂46のグループの雰囲気にもめちゃくちゃマッチしている幸せ動画でございました。

 

約束の彼の地(『日向坂463周年記念MEMORIAL LIVE〜3回目のひな誕祭〜 Day2 公演』の感想)

 つい先程まで行われていた日向坂46の東京ドーム公演を配信にて拝見しました。その感想文を覚えているがままに書いていきます。

 今回のライブは3月30日、31日と2日間の公演だったわけですが、あいにく1日目は見ることができず、2日目だけとなっていました(そもそもは両日現地参加したかったはずなのにこうなってしまった)。

 

 開演前、としちゃん(加藤史帆さん)と齊藤さん(斎藤京子さん)の影ナレがあり(「ご了承ください」が言えなくてへにょってしまうところがとしちゃん可愛いポイント)、いよいよ待望の東京ドーム公演が始まります。

 『約束の卵』がかかりながら、過去の映像が流されます。もうこの時点で目頭があちぃです。東京ドームでライブをすること自体が、グループの強さと勢いが必要なことで圧倒されるわけですが、それだけでなく、ひらがなけやきけやき坂46)や、そして日向坂46の改名してからのこれまでの歴史を映像で振り返ることで、より一層「東京ドーム」という場所の神聖さとそれが念願の夢であったことを改めて実感するわけです。約束の卵の歌詞「一緒に歩いて一緒に辿り着こう」の重さよ。

 そして過去の映像とともに、ステージに現れた大きな白い風船(卵がモチーフかな?)が膨らんでいき、最後に割れてメンバーが登場します。

 1曲目『キュン』2曲目『ドレミソラシド』と、日向坂46のファースト&セカンドシングル表題曲が披露されます。センターはもちろん小坂菜緒さん。これまで長い間休養されていたのですが、3月上旬に復帰をブログ内で発表され、今回の東京ドーム公演でもステージ登場が期待されていました。そういったわけで、ステージでの小坂さんを拝見するのはかなり久しぶりだったわけですが、もうね、登場した瞬間に会場の空気が丸ごと持っていかれるような感覚でした。いやはや、圧倒されたなー。生まれ持ったタレント性・カリスマ性なのでしょう。『キュン』『ドレミソラシド』は小坂さんが休養されて以降のライブでは他のメンバーが代役センターを務めてきましたが(もちろんそれも素晴らしかった)、やはりセンターの位置に小坂さんがいることに強さたるや。そして披露される日向坂46の原点である『キュン』の説得力。激強です。あと『ドレミソラシド』の始まりが一人が指揮者となって円形に広まったメンバーを奏でるような振り付けなんですが、その指揮者の位置に小坂さんがいることでワクワクが止まらなかったです。

 シングル表題曲を2曲続けたところで、MCに。ここで小坂さんから改めて復帰の挨拶と、キャプテン佐々木久美さんからの挨拶が。このキャプテンの言葉も良かったです。復帰される小坂さんには「こさかなのペースで」という優しい言葉で背中を押し、そして残念ながら東京ドーム公演の直前で新型コロナウイルス感染によって参加できなくなってしまったひよたん(濱岸ひよりさん)へのフォロー。これも、過剰にフォローして濱岸さんとファンのおひさまを不安にさせない絶妙な言葉を述べられていて、素晴らしかったです。圧倒的な包容力、ずば抜けたキャプテンシー

 その後は三期生の3人(高橋さん森本さん山口さん)が3月31日で高校生じゃなくなるけど、その高校生最後の日に東京ドームに立てていることの喜びを述べられていました。そして日向坂46の聖母ことなっちょさん(潮紗理菜さん)の「おひさまのみなさん、3周年おめでとー!」という、日向坂にとって3周年だけど、それはおひさまにとっても3周年であることを伝えていました。なんちゅう優しい子なんや。「世界で一番大きなお誕生日会」ですってなんて素敵な言葉なのでしょう…

 MCを終えて、今となっては懐かしい『おいで夏の境界線』を1期生が披露します。私にとっては、おそらくライブで観るのは初めてでした。爽やかで素敵な曲なんですけど、ひらがなけやき時代の曲だと客席のペンライトが一気に緑色になるのもすごかったです。よく訓練されているおひさまだこと…みーぱん(佐々木美玲さん)の煽りでウェーブも作っていました。そして次の曲は令和のLOVEマシーンこと『キツネ』(何百回と書いています)。会場ボルテージぶち上げ楽曲で、ステージに火柱も吹き上がります。客席の合間を、めいちゃん(東村芽依さん)と丹生ちゃん(丹生明里さん)がキックボードみたいな取手のついたトロッコで駆け抜けていきます。ラスサビの「こんこんこんこんこーん!」でセンターのひなちゃん(河田陽菜さん)が跳び上がりながらステージに登場し、紙吹雪も舞っていまいた。まだ4曲目なのにどうなってんねん飛ばしすぎちゃうか…という心配ももろともせず、次曲『ハッピーオーラ』が披露されます。こちらもひらがな時代の曲(センターとしちゃん)で、曲名通り多幸感に包まれる素敵な曲です。曲の雰囲気にマッチするように、としちゃんと小坂さんは気球に乗りながら会場を浮遊していました。地上組もケーキのようなトロッコに乗って会場を移動しますし、バブルガンでシャボン玉が飛ばされまくるし、でかくて長い風船のひょろひょろも登場し、メルヘンな世界観のステージの出来上がりです。そう思っていたら会場中央にはケーキのステージが登場し(リアルケーキも)、ようやくここで私は「そうか、お誕生日会だからか…!」と思い至ることができたのでした。あやうくメルヘンな世界観に持っていかれるところだった。

 『ハッピーオーラ』に続き、穏やかで爽やかな『窓を開けなくても』が披露されます。曲の始め、配信画面ではべみほちゃん(渡邉美穂さん)と小坂さんのアップが映されていて、私は「わかってるねぇ…それそれ!」と感じました。この曲が出た頃はたしかドラマDASADAがやっていた頃だったので、そのメインヒロイン2人が並んで映っていることがエモーショナルでした。曲終わりに小坂さんと佐々木美玲さんのツーショットも素晴らしかった。

 そして、衣装が変わって落ち着いた雰囲気のドレス衣装となり、『こんなに好きになっちゃっていいの?』が披露されます。センターは齊藤京子さん(シングルリリース時のセンターは小坂さん)。この斎藤さんの表情がまた画になってたんだなぁ。『こん好き』は落ち着いた曲調に反してかなりダンサブルな曲なのですが、この公演ではスタンドマイクが立たせた振り付けになっていて、より上品な仕上がりになっているように感じました。間奏でのキャプテンとこのちゃん(松田好花さん)のペアダンスもこの曲の見どころ(キャプテンがこのちゃんを持ち上げてくるくる回す)なのですが、今回の振り付けで2人のペアダンスはまるで舞踏会のそれでした。

 穏やかな曲が続いたところで、次の曲は1期生と2期生による『抱きしめてやる』。またもやアップテンポ振り付け激しめ楽曲ですが、これもけっこう珍しいナンバーな気がします。2019年のSSAで披露されてたぶりかしら(記憶違いだったらごめんなさい)。センターは渡邉美穂さん。強い女性の曲(タイトルにもあるように何があっても私が抱きしめてやる、という曲です)と渡邉さんのキリッとした表情がまぁ似合うこと。めちゃくちゃかっこよかったです。

 そして再び中央ステージからのMCに。初日のMCではこのちゃんがうずらの卵を食べたそうですが(冠番組『日向坂で会いましょう』内で実施を公約)、今日はきょんこハートでハートの陣形となってMCをすることに(番組内で公約)。初日が楽しすぎてお母さんに電話しちゃった高本彩花さんの可愛らしい話や、2日目でも「広いなぁ〜」と思うまなふぃ(高瀬愛奈さん)がありました。また、東京ドーム天井のスピーカーに「私たちも何か当てたい!」(番組内で公約…めちゃくちゃな公約ばかりだ…)ということで、渾身の「トゥース!」をぶち当て、「…ばいばーい!」とやりたい放題でステージから去っていく1期生でした。素晴らしいおねえさんたち。

 残された2期生&3期生がMCを引き継ぎます。「まだ公約が残っている人いる?」の質問に、挙手しようとする丹生ちゃん。挙手させまいとするひなちゃん。「お味噌汁が濁ってまーす!」と場を和ませつつ(丹生明里さん河田陽菜さんは「お味噌汁コンビ」としても活動中)、東京ドームの客席にかめはめ波を打つにぶちゃん(これも番組内で公約)。客席がオレンジに染まってウェーブができていました。そしてヲタ、ファンとして実は東京ドームに来たことがあるというまりぃ(森本茉莉)さんの話なんかが飛び出していました。

 MCを終え、これまたひらがな時代の懐かしい楽曲『こんな整列を誰がさせるのか』、そして日向坂46になってからの楽曲『My god』を1期生が披露します。衣装はひらがなツアー時(だったっけ?)のハーネスの衣装。会場には噴水が上がり幻想的な光景でした。『整列』は「大人からの抑圧」みたいなものがテーマの曲で笑顔のない曲(それがかっこいいんですが)なのですが、その一方で『My God』は一期一会の出会いを歌った曲で、終始笑顔の眩しい曲です。なので、その曲と曲との対比が面白かったです。

 1期生の曲の後は2期生3期生『Dash&Rush』というこれまた爆早テンポの激しい曲。衣装はアルバム『走り出す瞬間』のときの白い制服衣装でした。またもやキックボードみたいな取手のついた高速トロッコ(あれ名前ついてんのかしら?)で客席の間を爆走します。そしてひらがな時代の楽曲『未熟な怒り』を2期生が。日向坂の曲とひらがなけやきの曲が交互に入り乱れる、寸分のスキもない構成です。『未熟な怒り』もけっこう歌詞だけをみると重くて、そしてその歌詞に合うような渡邉美穂さんの睨みつけるような眼力がとにかく激強で印象的でした。

 そしてそして、3期生のターンです。『この夏をジャムにしよう』『Right?』と、3期生楽曲が続けて披露されます。「東京ドームもジャムにしちゃうぞ〜!」と言いながら登場するの、(意味はわからないけど)シンプルに強そうですし、ポップな夏ジャム衣装(チェックのシャツとカラフルスカート)が映えていました。ピュアで明るい曲がスーパー似合う3期生ですが、改めて考えると高校生4人だけで東京ドームの5万人の観客を沸かしてんの、えげつないことですよね。ステージを観ながらそういうことを考えだしてしまい、次の『Right?』のサビ「Right?いいんだよね?」のところで気がついたら目頭が熱くなっていました。「いいんだよ!」と画面の前で頷いている私でございました。あとみくにちゃん(高橋未来虹さん)のスタイル・身長が4人並ぶと際立っていました(今となっては170cm超えてるでしょあの子…)。

 3期生のターンが終わり、次は再び1期生がステージに登場するのですが、ここで披露されたのが『それでも歩いてる』。あのですね、この曲の演出がね、めっっっっっちゃくちゃ良かったのです…!!!!!。本当、声に出して言いたいし、演出家さんにありがとうと5億回言いたいぐらいです。こちらもひらがな時代の楽曲で、アコギ1本だけで歌詞を聴かせるシンプルで力強い曲です。「人生は転ぶもの」と言い切ってしまうサビで、諦めや失敗を肯定しつつ、それでも人生は進んでいくから歩いていくしかない、ということを歌った曲です。もはやこれはブルースなのです。そんな感傷的な曲なのですが、演出もまぁ負けてないくらいすごい。1期生は『それでも歩いてる』のMVの衣装で登場し、会場中央のステージに図工室にあるような木製の四角い椅子に座ったり、その上に立ったりしながら歌い上げていきます(個人的にまなふぃの歌声がめちゃくちゃ良かった)。で、曲の後半にはメンバーがそれぞれ椅子を1つずつ持っていくのですが、そこで最後まで空席の椅子が3つだけステージに残ってしまうのです。すべてを説明はしてないですが、これは日向坂46(けやき坂46)がこれまで歩んできた途中で卒業された、長濱ねるさん、柿崎芽実さん、井口眞緒さんを表しているのでしょう(そこまで説明してしまうのは野暮ってもんですが)。たとえ空席ができてしまったとしても、グループとして残った者は未来に向かって進んでいくしかないわけなんですよね。曲の最後に、横一列に並べた椅子を1期生が飛び越えて去っていくシーンとか、もうね、目頭真っ赤。&鳥肌。こういうのに超弱い。

 


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 ※参考:それでも歩いてるMV

 

 そんなエモーショナルな1曲を終え、ここから怒涛のセットリストが続きます。3期生による寸劇(ぱるちゃん(山口陽世)自転車こいでたのが面白可愛かったです)やダンストラックを経て、『アザトカワイイ』『ソンナコトナイヨ』『期待していない自分』と激しい曲のオンパレードです。『アザトカワイイ』は各々が色んな持ち物(花とか本とかソフトクリームとか)を使いながらの振り付けが観ているだけでも楽しく、『ソンナコトナイヨ』の代打センターはもはや恒例となっためいちゃんが務め(最強に可愛い)、『期待していない自分』では、センターの佐々木美玲さんによるみーぱんダッシュリベンジも観ることができました(『期待していない自分』は間奏で佐々木美玲さんが駆け抜ける振り付けがあるのですが、どうやら1日目ではダウンしてしまったとのこと。そりゃこのセトリじゃねぇ…)。

 休憩するタイミングも無さそうなほどのえぐいセットリストが続き、次はセンターとしちゃんの『君しか勝たん』。これも観ていて楽しいステージでした。ステージにはメンバーだけでなく、大道芸をされる方々が次々と登場し、一輪車やリボンやバトンなどなど、それぞれが披露されながら曲が進行していきます。サーカスやパーティのような明るい雰囲気が曲とマッチしています。間奏では怪しいでかい箱が登場し、中には誰もいないはずだったのに一瞬で中からメンバーが登場したり、一人サイズの箱にとしちゃんが入って「ばいばぁい!」と言って消え、中央ステージに現れます。としちゃんはニッコニコでKTダンスをしていました(番組内でオードリー若林さんに考案され、公約済み)。『君しか勝たん』は横並びのダンスも映像に映えてて好きなんですが、さらにパーティ感マシマシで楽しいステージでした。まさに、ひな誕「祭」という感じで。

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※参考:KTダンス

 そして、再びひらがな楽曲に。1期生による『永遠の白線』と2期生による『半分の記憶』。こうやって交互に聴いていくと、振り付けも歌詞も曲の雰囲気も日向坂46とけやき坂46とではかなり違いがありますね。『永遠の白線』は眩しいくらいの白い制服衣装で、『半分の記憶』は黒い衣装(どちらもひらがなの衣装)だったので、その反転具合も美しかったです。『永遠の白線』で会場一面が白色のペンライトに切り替わっていたのも素晴らしかったです。

 ひらがな楽曲が続いた後はセンターおすしちゃん(金村美玖さん)による最新シングル『ってか』が披露されます。センターの威力ってのは凄まじいもので、もはや『ってか』は完全に「金村さんの曲」で定着しています。同じように、『君しか勝たん』はとしちゃんの曲のイメージですし、『キュン』や『ドレミソラシド』は小坂さんのイメージが定着してます。それぐらいシングル表題曲のセンターを務めることってのは、選ばれたメンバーにとっては嬉しいことであるとともに、想像できないくらいの重圧がかかるものなのでしょうね…。このライブの『ってか』はダンスアレンジも効いてて、疾走感と金村さんの儚げさのある笑顔が素晴らしかったです。あとラスサビぐらいで金村さんすげー跳んでた気がする。

 全然MCを挟んでないけど大丈夫かいな…という観ている側の心配もよそに『NO WAR in the future 2020』と続けて『誰よりも高く跳べ!2020』のライブ終わり定番曲が並びます。『NO WAR〜』はメンバーが花道を走ったり、トロッコに乗って会場を移動しながら煽ります(ご時世で声を出せないのが本当にもったいない!)。それにしても、『NO WAR〜』はこの時代このタイミングで、どうしても意味を持ってしまうもんだなぁ…とちょっと思いました。本当ね、しんどいことの多い世の中ですけど、せめてアイドルには笑っていて欲しいと思うのですよ。それだけで応援している人にとっては生きていくエネルギーになりえるのだから。つらいのは現実だけで十分なのです。また、会場中央の、そこからさらに上方に伸びたステージのてっぺんにまなふぃがいたのはちょっとだけ面白かったのは内緒の話。『NO WAR〜』の最後に「PrrrrrrrrrrrrrFuuuuuuuuuuu!!!」という巻き舌と叫び声が聞こえてきて「パリピの煽り方やんけ!」と思ったらキャプテンでした。そんなキャプテンの煽りがめちゃくちゃかっこいい『誰跳べ』は、恒例となるイントロのフリーダンスはカスカスダンスでした(春日さん観に来てたのかしら…?)。会場中の至るところでメンバーが客席を煽り、客席の熱量も最骨頂に達します。『誰跳べ』おなじみのキャプテンの煽りですが、「東京ドーム跳べぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」は最高にかっこよかったです。後にライブレポート記事にも写真が載っていましたが、マジでボヘミアン・ラプソディでした。

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※参考:モデルプラスさんの記事と最高にかっこいいキャプテンの写真

 

 会場の熱量も上がりきったところで、ステージにはこれまでの歴史を振り返る映像が映し出され、そして白色の衣装で身をまとったメンバーが登場し『JOYFUL LOVE』が披露されます。会場中央の円形ステージが回転しながら会場を一望できるようになっているのですが、そのステージでの白色のメンバーと、会場の客席が作り上げる虹色の光景が素晴らしかったです。間奏中に挨拶があって、最後はメンバーが虹の中を花道を渡って捌けていきました。最後の挨拶でキャプテンの「これからも日向坂46は皆さんの虹とともに歩んでいきたい」という言葉が印象的でございました。

 

 と、ここまででひとまず終演なのですが、もちろんアンコールがあります。アンコール一発目はなんと新曲(!)『僕なんか』が初披露されました。時期的にそろそろ新曲が発表されるタイミングかな?とは思っていましたが、まさかアンコールで発表されるとは…。新曲のセンターは復帰された小坂菜緒さん(そしてフロントにキャプテンくみちゃんがいるのが私は嬉しいのです)。『僕なんか』はまだ今回のライブでの一回きりしか聴いてませんが、コンセプトや雰囲気的には『こん好き』に近いかもしれません。タイトルにあるように「僕なんか…」と自分を責めてしまう主人公の曲で、後ろ向きっぽいところも。これがまた今の小坂さんの雰囲気とマッチしていて、発売が今から楽しみです。衣装も大人っぽい雰囲気のトレンチコート風で落ち着いたアースカラーの配色も相まって、また新たな一面が見られそうでワクワクです(余談ですが、発表されたばかりの新曲のアーティスト写真見て、サファリパーク感を感じました)。

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※参考:新曲アーティスト写真(全体像)

 

 そして、MCを挟んで『日向坂』。大団円のエンディングにふさわしい一曲です。メンバーが歌いながら花道を一周していきます。渡邉さんが小坂さんをつっついたり、としちゃんと小坂さんが手をつないで歩いていく景色が非常に良きでした。

 そしてそして、ダブルアンコール(まだ披露していないあの曲がありますものね)で再びステージにメンバーが登場します。そして、キャプテンの佐々木久美さんからの最後の挨拶がありました。「メンバーが増えるだけじゃなくて、見送ることも経験して、ひらがなけやきの頃から成長した部分も変わらない部分もあって…」「最初の頃は『私達なんて…』といいながら活動していたけど、信じて進んできてよかった」とこれまでを振り返る言葉が印象的でした。そしてこれからのことについて「東京ドームはゴールだと思ったけど、ここがまた出発の地となりました」「これからも最高の景色を見ていきたい」と締めくくり、ラスト曲『約束の卵 2020』が披露されたのでした。

 

 …ということで、一気に書き上げましたが、もうね、本当に素晴らしく素敵なライブでした(毎回言ってるけれども!)。約束の彼の地である東京ドーム公演ってのはメンバーの夢であって目標であって、それはファンである我々にとっても同じ夢であったわけなのですね。そんな約束の彼の地でのライブは2回の延期を経てようやく叶ったわけですが、そこには、日向坂46になってからの想いだけじゃなくて、ひらがなけやきの頃からの歴史も、仲間を見送ってきたことも、辛かったことも全部ひっくるめて背負って臨んだステージだったわけです(最後のキャプテンの言葉にもありましたが)。そういうことを、披露された楽曲や演出から感じました。しんどいことも決して見なかったことにせず、すべて向き合って糧にして背負って前を見て、そしてみんなで登っていくことの力強さと美しさ。それが日向坂46というアイドルグループの生き様なのでしょう。

 だから、応援している側も「自分も頑張ろう!」と思えるのではないでしょうか。そういう生きていくためのエネルギーをもらったライブでございました。

 あと、最後の「約束の彼の地が出発の地となった」という言葉が嬉しかったですね。これからの日向坂46の歩んでいく景色が楽しみです。本当に、素晴らしいライブでございました。

 

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【セットリスト】

01. キュン
02.ドレミソラシド
03. おいで夏の境界線
04. キツネ
05. ハッピーオーラ
06. 窓を開けなくても
07. こんなに好きになっちゃっていいの?
08. 抱きしめてやる
09. こんな整列を誰がさせるのか?
10. My god
11. Dash&Rush
12. 未熟な怒り
13. この夏をジャムにしよう
14. Right?
15. それでも歩いてる
16. アザトカワイイ
17. ソンナコトナイヨ
18. 期待していない自分
19. 君しか勝たん
20. 永遠の白線
21. 半分の記憶
22. ってか
23. NO WAR in the future 2020
24. 誰よりも高く跳べ!2020
25. JOYFUL LOVE

(アンコール)

26. 僕なんか
27. 日向坂

(Wアンコール)

28. 約束の卵 2020