後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

もしもブックス

 3月27日。日曜日。昨日は朝から夜まで大雨が降り降り続いていましたが、今日はうってかわって快晴の一日でございました。

 つい先日発売した小説現代の最新号(2022年4月号)で面白そうな特集がされていたため、手にとってしまいました。普段、文芸雑誌は購読しているわけではなく、なんだか面白そうな特集が組んであったり好きな作家が寄稿していたら買う、というスタンスです(出版社の狙い通りですね)。その結果、本棚には文藝や文學界小説現代SFマガジンが飛ばし飛ばしで並んでいます。我ながら節操のない下品な本棚です。

 

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 装丁のデザインもおしゃれで厨二心をくすぶる感じが良いですね(なによりピンクってのが良い)。そして、特集。「もしもブックス」なんてふざけたタイトル(小説ってだいたいもしもの世界を描いたもんやろタイトルもうちょっとなかったんかいな…)ではあるものの、書き手は盤石のSF作家陣です。特集名にもあるように、今の史実ではそうなってるけど、「もしもあの時〇〇だったら…」と想像を膨らませた短編が並んでいます。SFではベタなテーマではあるものの、どの作品も面白かったです。

 宮内悠介氏『パニック』は、1965年ベトナム戦争時に日本でSNS(今のツイッターをモデルにしているのかな)がもしもあったら…という作品で、世界初の炎上事件がテーマです。時代が違えど本当にSNSがあったとしたら本当にこういう感じのことが起こりうるんだろうな…と思いました。もっと積極的に国が管理してそうな気もするけれど。

 石川宗生氏『うたう蜘蛛』は死ぬまで踊り続ける奇病と、そこで「治せるぜー!」と現れた錬金術師がどうするか…という話。ファンタジィ感強めで、石川氏の作風(ユーモア)が随所に見られた作品。

 伴名練氏『二〇〇〇一週目のジャンヌ』はタイトルからもわかるようにループものです。ジャンヌ・ダルクが処刑されたその一日を繰り返すというもの。しかし、ただのループものではなく、SF的なアイデアと、氏の作品らしい情緒的な終わり方が読後感が良かったです。設定から『オール・ユー・ニード・イズ・キル』をほんのり思い浮かべました。

 そして小川一水氏『大江戸石郭突破仕留』。個人的にはこれが一番好きな作品でした。もしも江戸が石でできた堅牢な建造物の並んだ国だったら…という、なんでそんなん思いついたんや…というアイデアが素晴らしい作品。しかもちゃんと事件が起こって、その謎もスッキリ解明されるという、短編だとは思えないほどの濃度でした。キャラクターも魅力的だし。やっぱり小川一水ってすげぇや、あと時代小説(と言ってどうかわからないですが)も小川氏は書けるのか…なんて思いました。

 どの作品も面白かったので特集部分だけ買ったその日のうちにすぐ読み終わってしまいました。しかし、他の部分(特集以外のところ)どうするかなーというのがこういう文芸雑誌の買い方をしたときの困った点でもあるのでした。

 

「いじわる選手権」を考える

 現在、テレ朝系列で放送している『キョコロヒー』という番組があります。『キョコロヒー』は日向坂46の齊藤京子さんと芸人のヒコロヒーさんが出演されているトークバラエティ番組なのですが、その番組の中で「いじわる選手権」という企画があります。

 この「いじわる選手権」というのは、日常生活の中で他人から受けた「いじわる」に対して、いかにしてやり返すかを考える企画です。この時代には珍しい好戦的でバチバチな企画なのですが、ただ言い返すだけではいけないというのがこの「いじわる選手権」のミソとなっています。嫌なことを言われた時、ただ言い返すだけだと、引き分けで終わってしまいます。また、それどころか相手からのさらなる反撃を浴びてしまう可能性すらあるので、いかにして自分が損することなく、かつ相手はぐうの音も出ないようにやり返すことができるか、という点が勝負の決め手となっているのです。

 もうね、私は『キョコロヒー』のこの「いじわる選手権」がめちゃくちゃ好きなんですよ。しかも面白いだけでなく、学びがある。早く全国の小中学校でも教えるべき。

 そしてなにより、この企画にはいじわるに対する「正解」を教えてくれる先生までいるのです。それが、ヒコロヒーさんの同居人で、お笑いコンビ「太陽の小町」のつる先生なのです。そりゃ、私も最初は番組内のヒコロヒーさんよろしく「いじわる返しに正解なんてあるんかいな」なんて疑っていましたが、つる先生の正解例を聞くと、「いや正解だなこりゃ」と思うしかないのです。

 参考に、これまでのいじわる選手権で出題された問題とつる先生の模範解答(また齊藤京子さんヒコロヒーさんの解答と先生のコメントも)を載せていきます。

 

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◎2021年12月1日放送回

シチュエーション:男友達、その友達の女性、自分の3人で買い物中。

女友達に「この服かわいい」と話したところ、「ババくさくない?」と返され、「私は可愛いと思う」とさらに返したところ「確かに似合ってる(笑)」と言われる。

ヒコロヒーさんの解答:「よく見たらあんたのほうが似合ってる似合ってる、買いやぁ」

齊藤京子さんの解答:「こういうのが男ウケするんだよね」

つる先生の模範解答1:「ババ臭いなんてお店に失礼やん(男友達に呼びかける)」

 →センスよりも「ババ臭い」と店内で言える性格の悪さを際立たせる。さらにそれを一緒にいった男性に問いかけることによって、「ババ臭い」って言葉があらわになる。

つる先生の模範解答2:(店員に)「すいません!この服って50代用なんですか?…ほら!ババ臭くないって!」
 →「ババ臭い」と言った事を店員全員に知らしめる。「ババ臭い」と言ったことの責任をとってもらう。

 

◎2022年1月12日放送回

シチュエーション:自分と女友達で何気ない会話をしている時、友達に「ファンデーション忘れたから貸して」というと「〇〇ちゃんに似合うかなぁ、私肌白いから合うかなぁ」とファンデーションを渡される。

齊藤京子さんの解答:「合わなくても◯◯ちゃんと同じ色になれるなら体験してみたい〜!」
 →(先生からのコメント)全然いじわる言えてない。体験してみたい、だけでは攻撃力ゼロ。あなたの色がどういう色か伝える事が必要。70いじわる。
ヒコロヒーさんの解答:「ほんまや〜私いつもCCクリームのみやからな〜(下地クリームだけでいけることを言う)」
 →(先生からのコメント)CCクリームのみでマウントをとりたいのはわかるが、それができるのは10代20代だけ。身だしなみとして、30代以上はファンデーションしないといけない(ズボラな人だと思われる)。その点で相手にさらに攻撃のスキを与えてしまう。10いじわる。

つる先生の模範解答:「これってさ中高生ではやってるやつ?白浮きするって有名やから使わん方がいいよ。私が使ってるブランドあるんだけど、今度一緒についてってあげるから、買ったほうがいいんちゃう?」
 →あなたが使っているものは安物だと強調する。一回借りて使うのに返すことで相手のプライドが傷つく。さらにアドバイスを装い、相手の色も合ってないことを主張する。

 

◎2022年3月2日放送回

シチュエーション:女友達が、自分に対して「この写真めっちゃ映りいい!」と言いながら実物をディスってくる。
齊藤京子さんの解答:「お〜!!すごい!めちゃ盛れた!こんないい感じに映してもらえてこのアプリさんありがたいわ」
 →(先生からのコメント)全体的には◯ しかし優しくて「このアプリさんありがたいわ」にとどまっているので、相手にダメージを与えていない。工作(相手がアプリを使っていること)をバラすことが必要。90いじわる。
ヒコロヒーさんの解答:「ほんまや〜普段はもっと汚いもんな〜(て言いたいことですか?と暗に言う)」
 →暗に言うことができているのか?相手の思うつぼになっている。30いじわる。

つる先生の模範解答:「それってどんなアプリ?めちゃくちゃ盛れてるやん。加工技術ってあがっているんやな。だからいつもインスタグラム可愛いと思っててん」
 →常習的にこのアプリを使っていること(映りがいいこと)を伝えるのがいじわる返し。

 

◎2022年3月9日放送回

シチュエーション:好きな人が近くにいるのに、友人から「お前その服昨日もきてたよな?」と言われる。
齊藤京子さんの解答:「色違い、大人買いするからさ〜」
ヒコロヒーさんの解答:「色違いで5枚買っちゃってん」
 →(先生からのコメント)財力で攻めたところは評価するものの、まだ隙があり、返される可能性が高い。まとめて似合ってないと言われたらどうするか?服が昨日と同じことをし指摘する奴はそこまで言ってくるはず。
つる先生の模範解答:「昨日忙しくて帰れてないんよな〜。え、いつも人の服チェックしてんの?見張りやん!みんなも見張れてんで!みんなも気をつけよな〜!」
 →毎日人の服をチェックしていることを周りの人に言うことで散らす。それによって言った人がみじめになる。

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 …ということで、過去開催されたいじわる選手権をみてきました。ね?どれも珠玉のいじわる返しでしょう?「いじわる返しの正解」の意味が分かった気がします。これらの先生の解答に対して、斎藤さんは「ただの嫌の人ではなく、嫌なことを言われた時にそれを超える対応ができる」と、ヒコロヒーさんは「能動的に嫌なことは言わないが、1言われたときに8000を返せる」と感想を述べられています。

 

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 さて、このままではただの番組(というかいじわる選手権)の感想だけに収まってしまうので、もうすこし「いじわる返し」について掘り下げて考えてみようと思います。

 どの選手権の模範解答をみても、共通して言えるのは、「相手のいじわるにストレートに対抗しない」ということかと思います。例えば、2021年12月1日放送回ではババ臭い服を似合っていると言われた際に、直接言い返すのではなく男友達や店員に「ババ臭い」と言われたことを広めて話を大きくしたり、2022年3月9日放送回では「昨日と同じ服を着てた」ことの指摘に対して、周囲に「みんなも服見張られてんで」と話を大きくさせています。

 この、「同じ土俵に上がらない」ということが、いじわる返しには重要なのではないでしょうか。先日読んだ京極夏彦『地獄の楽しみ方』に、似たようなことが書かれていました(というかそっちを先に読んだことがいじわる選手権を振り返る機会になった)。そもそも売られた喧嘩を買う義理はなく、土俵に上がるすら必要はない、というのです。いじわるする側のマウンティング行動はいきなりしかけるわけですが、しかけられた側としては、マウンティングされるまで意識すらしていなかったわけです。しかし、マウンティングする側は相手が言われたら嫌な部分などを想定し、ある程度の勝算があって勝負をしかけてくるのです。なので、一見言い合いのように見えるけれども、実はルールは相手側がもっているので、最初から分が悪いのです。なので、そこで簡単に言っていることに言い返したとしても、相手はこちらがどう出るかある程度予測もしているはずなのです(=さらに言い返される可能性がある)。なので、その「予測の外側」にいく必要があるのです。

 じゃあどうすればよいかというと、最初に書いたように、最初から相手の勝負に乗らないことが重要なのでしょう。マウントをしかけてくる相手のプライドが一体どこに存在するかをよく観察し見極め、相手の意識すらしていなかった予測の外側を攻めることが、いじわる返しの極意ではないでしょうか。そうやって、ルールや土俵を無効化させてやるのが効果的なのです。

 なので、昨日と同じ服のことを言われても直接言い返すのではないし、写真映りがいいことを言われたらアプリ自体を使っていることに言及する。化粧品が似合わないことを言われたらその化粧品の欠点を指摘するのとともに、いっしょに買いに行ってあげることを提案する。そうやって相手の想定を巧みにかわしていくことが、いじわる選手権には求められていることなのです。

 そんなことを思ったのでした。「いじわる選手権」、実はものすごく奥深く、高度な技術と反射神経が求められている。

 

暖房

 3月22日。火曜日。最近までずっと暖かかったけれども、今日はやたら寒かった一日。もうすでに冬用のゴワゴワ防寒パーカをしまった後だったので、家を出てから後悔しました。雨も降っていましたし。「冬やんけボケェ!」と天に向かって叫んだとかそうでないとか。

 東京では消費電力の増加に伴って計画停電をするとかどうかのニュースを見かけました。大変ですね(他人事)。こういう時になって、エネルギー源を電気オンリーにした際のデメリットを目の当たりにします。今日なんかは寒かったので余計不安に感じられた方も多かったことでしょう。私の家はこういう時のことを想定して、昔から暖房器具には灯油ストーブを使っています。実家も今住んでいる部屋も灯油ストーブです。電気が止まっても使えますし、ストーブの上面に薬缶を置くことで簡易加湿器にもできます。そもそもエアコンの温風自体が苦手なので(長時間浴びてると頭痛くなる)、重宝しています。

 また、エネルギー源問題もそうですが、いろんなものを一つにまとめるのが不安なのです。長年ガラケースマホの2台持ちだったのもそうですし、電子マネーも信じておりません。音楽プレイヤー(ソニーウォークマン)も未だに現役バリバリで持ち歩いています(もちろん有線イヤフォンで)。今はそれらの機能(電話も電子マネーも音楽再生も)をすべてスマホ一台に集約できるのでしょうけれども、絶対スマホ無くすマンこと私にとっては、抵抗があってとてもじゃないけれどできません。リスク分散&リスク回避だと思い込んでいますが、こういう奴が年取ってテクノロジィの進歩についていけない頑固クソジジイになるんだろうなぁ…とも思っています。くわばらくわばら。

 

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 最近は時間がなくて読書をする時間もとれていません。そんな中、かろうじて読めた薄い本2冊。京極夏彦『地獄の楽しみ方』と和泉悠『悪い言語哲学入門』を読みました。『地獄の楽しみ方』はSNSで出版社が「京極夏彦先生なのに薄い!」みたいな紹介の仕方をしていて「うわぁ…」なんて思ってしまいましたが、内容は面白かったです。「言葉」の、特に使い方についての本で、紹介を読んだときには「SNS炎上、対人トラブルーあらゆる争いは言葉の行き違いから起きて…」という導入に「本のタイトルに比べてずいぶんスケールが小さいなぁ…」なんて思ってしまいましたが、もともとは15歳〜19歳の若者向けの特別授業の内容を元に構成した本とうことで、納得しました。

 『悪い〜』も言語についての本。「悪口」がなぜ悪口たらしめているか、とうことを言語学を使って解きほぐしていった本。タイトルにもあるように入門編なのですけど、言語学や哲学はあまり予備知識が乏しかったので難しい部分もありましたが、面白かった。 

 

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「おくびにも出さない」の「おくび」はげっぷのこと

 3月17日。木曜日。朝夕は少しだけ寒かったけれども、日中はぽかぽかと暖かかった一日。もうすっかり春です。昨夜は東の方では大きな地震があったようですが、私の住んでいる地方では揺れるどころか注意報すら出ていませんでした。変わらぬ平穏な日常が続いております。しかし、ツイッタを開けば地震の情報や感想にあふれていて、私が普段聴いているラジオ番組は軒並み中止となっての大騒ぎで、「本当に同じ国の話なのか???」と錯覚するほどでした。このような影響の違いを体験すると、やっぱりこの国は東京中心にまわってんだな、としみじみと感じるのでした(皮肉でもなんでもなく)。また、かと思えば一日経った今ではもう誰も地震に関することはつぶやいておらず、「本当に地震なんかあったのか?」なんて思うのでした。地震の影響すら賞味期限の早い現代を生きています。

 朝から研究室で資料を作ったり、それに飽きたので実験室の掃除をしていました。この時期は人が少ないので捗ります。先日にはようやく新しい純水製造装置(きれいな水をつくる機械)が来ました。もともとあったのですが、壊れてしまっていたので、きれいな水が欲しいときは隣の研究室の装置を使わせてもらっていました。ポイントは申し訳無さそうな顔(得意技)をすることです。普段、その研究室の学生の声や作業音が大きくて「うるせぇな殺すぞ」なんて物騒なことを思っていたとしても、それをおくびにも出さず、申し訳ない顔をするのです。しかし新しい装置が来たので、これからはそんな顔をしなくて済みます。助かる〜。

 その後、研究室の掃除にも飽きたので、郵便局に所属している学会の年会費を支払いに行きました。面倒くさくて支払いをつい忘れていて、いい加減払ってくださいメールが来たので慌てて支払いに行ったのでした。こちらも100%の申し訳ない顔(得意技)をしながら。学会の年会費の支払い方ってのが厄介で、規模の大きな学会であれば、ネットからクレジットカードも使えるので簡単です。しかし小さな学会だと郵送で払込票が送られてきて、それを指定の金融機関(今回のはゆうちょ)に持っていて払わないといけないのです。そりゃ忘れるって。

 そういう一日でございました。

 

ぽかぽか・細胞・乱気流

 3月15日。火曜日。今日も日中は暖かく、過ごしやすい一日でございました。先週末から気温も20℃前後を維持しているので、すっかり上着も不要となっています。その反面、すでに花粉が舞っているようです。私は花粉症ではないと自分に言い聞かせているので、花粉症ではありませんが。この時期になると目は痒くなりくしゃみもでるのですが、病院に行って花粉症だと診断されたわけではないので、花粉症ではありません。限りなくグレーかもしれませんが、花粉症ではないのです。鼻に差すタイプの薬を使うと楽になるのですが、花粉症ではありません。断じて。

 すっかり春休みとなっているので、大学構内も人気(ひとけ)が減っています。朝から来年度の講義資料の作成と、先日書き上げた論文とは別の論文の骨組みを考えているうちに夜になっていました。講義の主軸となる内容は毎年変わらないのですが、ここ数年は新型コロナウイルス感染症の流行もあって、ウイルスの話を講義に付け加えています。付け加える内容も一年ごとに情報が更新されていくので、話題が尽きません(今年はオミクロン株とかデルタ株の違いについてを追加する予定)。

 自然科学、特に生物学においては、こういった情報の更新が多いように感じます(もちろん物理学でも化学でもそうなのでしょうけれども)。例えば、一昔前の生物学の教科書では「人の細胞の数は約60兆個」とだいたい書かれていました。しかし、今はどの教科書でも「約37兆個」とされています(されていないのは出版社が見落としているか改定をサボっている)。一昔前においては、細胞の質量と人間の体重との比を使って概算で人間一人当たりの細胞の数を算出していたのでしょう。そりゃあ、細胞の数を一つ一つ、体全体の至るところまで数えきるのはとてもじゃないけど不可能ですので。もちろん、体のどの部分も同じような細胞の密度で、同じように細胞分裂をするのならそれでも良かったのかもしれません。しかし、残念ながらそんなことはなく、臓器によって細胞分裂の仕方や密度が異なっています。そこで、臓器ごとに細胞の数を算出した人が現れたわけです(これも想像するだけでもとんでもない労力です)。そのおかげもあって、今ではより正確な「37兆個」という数が使われるようになったわけです。

 こういった例は他にもありますし、また、同じ現象でもそれを指す言葉が変化している場合もあります(例えば昔は「優性」「劣性」だったのが今では「顕性」「潜性」となっています)。なので、教科書や学術書は基本的には新しいモノを使うのが良いのです(古本屋で昔の教科書が安いのはそれなりの理由があるのです)。

 さてそんなわけで、ためになる話をしつつ、1回目分の講義資料も無事完成したのでございました。

 

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 エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』を読みました。先月の頭に早川書房から出版されたばかりの作品です。エルヴェ・ル・テリエ氏はフランスの作家で、この作品もフランスでかなーり売れたそうです(なんと110万部!)。私は氏の作品は初めてだったのですが、帯の「SFとミステリの見事な融合」という陳腐(だけども悔しいほどに誘惑的な)な謳い文句に見事つられ、つい手にとってしまいました。正直、その謳い文句とカバーの写真とあらすじだけでも、読み慣れている人が見たら何が起こるのかはなんとなく想像がつきますし、私も想像通りでした(ふふん)。しかし、そういうことをとっぱらっても、まぁまぁ面白かったです。ただ、ミステリといいつつも、別に何か解決するわけでもないのでスッキリはしませんが。

 あと、ところどころウィットに富んだ皮肉が差し込まれていたり、作中の合衆国に対するイメージが「フランス人作家っぽいなぁ〜」とは感じました。大統領そんな阿呆ちゃうやろ…って感じの。

 物語の展開に触れずに感想を書くのが難しい作品だったので(その技術が私にはなかった)、これ以上は詳しくは書きませんが、「自分だったら意外とあんま気にせずに生きてけるやろなぁ〜」なんて思いながら読み終えました。THE 呑気。

 

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ぴくせる・本

 ふと振り返って過去の記事に目を通してみたところ、「こいつSFとアイドルの話しか書いてねぇな…」と思った今日このごろです。何一つ有用なことを書かず、だらだらと日常を吐き出すだけの機械。一体誰が興味あるのか。そんな3月13日の日曜日でございます。

 先日からPixel 5aを使い始めているのですが、思っていた以上に端末が賢くかつサクサク動いて驚いています。長い間、携帯電話とスマートフォンの2台持ち、しかも「スマート」とは名ばかりのカクつきフリーズ上等のおバカ機種を何年も使っていたため、一気に進化した感覚です。マヂ黒船来航、マヂ文明開化。もともと、電話をするには携帯電話の物理ボタンが大変便利だったので愛していたのですが、さすがにガラケーだけでは不便な世の中のため、仕方なくスマートフォンも持っていたのです。それがこの度、ようやく一台に集約されたのでした。

 しばらく(おそらく2,3年)はこのPixel 5aを使い続けることでしょう。Pixel 6aの発売がどうだとか、IPhone SE3がどうだのニュースが出たばかりですが。

 

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 最近読んだ本のこと(結局本の話になるのよね)。

 ここ最近はノンフィクションばかり読んでいたそのぶり返しか、今週はまたフィクションを作品を読む週でした。

 

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 ハヤカワ文庫、しかもちょっと前(ここ5年くらい)の国内作品ばかり。明らかに積読消化です。

 上田裕介『ショウリーグ』、小川一水『アリスマ王の愛した魔物』、江波光則『我もまたアルカディアにあり』を読みました。

 『ショウリーグ』は野球がテーマの物語。普通、スポーツの試合は「筋書きのないもの」ですが、それを逆手にとって、投球・打撃・守備、そして勝敗にすら台本・シナリオがあって「ショウ」として見せることに特化させた野球リーグがあったら…というお話。題材はなかなか面白かったのですが、読んでいるうちに既視感があったのは、おそらく『ONE OUTS』の影響でしょう。ハヤカワ文庫ですが、SFではない作品でした(そもそもSFって何か…という面倒くさい議題は遠く彼方にぶん投げておきましょう)。

 『アリスマ王の愛した魔物』は『天冥の標』シリーズでおなじみの小川一水氏の短編集。個人的には小川氏は長編よりも短編の方が好みです。星雲賞も受賞した表題作も面白かったのですが、私は書き下ろしの「リグ・ライトー機械が愛する権利について」が一番好みでした。自律式運転車に乗せられているAIについての話です。あらすじやタイトル、設定だけ見ると、まずアシモフの『サリーは我が恋人』が思い浮かぶことでしょう(そうでしょうそうでしょう)。まぁタイトルの時点である程度テーマがわかる作品ではありますが。あとこの「リグ・ライト〜」は百合要素も足されていて新鮮でした。というのも、小川氏の最近の作品では、百合要素のあるSF作品(『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』)が有名ですが、以前からそういう要素のある作品も書いていたんだな…と今更ながらの発見でございました。

 

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 ※参考:『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』。最近続編が出た(まだ読んでいないけれど)。あと、数年内におそらくアニメ化すると思います。

 

 『我もまた〜』は終末世界を題材とした作品。この作者の方の作品は初めてでした。読みながら、政治色強いなぁ〜と思っていたのですが(終末の世界にも左翼的なデモを行う人々がいたり、など)、後から作品のレビューを漁っていると、どうやらもともとそれが作者の作風とのこと。そういった事を別としても、なかなか物語の構造を把握するのには読みづらい作品でした(読みづらいことと作品の面白さは無関係)。あと、陰気なストーリィが淡々と続いていくので、読んでいてなかなか気が滅入りました(気が滅入ることと作品の面白さは無関係)。

 

 

『迷おう。それが始まりだから。』の威力

 3月11日。金曜日。ほどよく暖かかった一日。週末には気温はさらに20℃以上まで上がるそうで、もういい加減モコモコ上着を破り捨ててやりたいです。絶対に数日後には後悔するだろうからしませんけれども。それぐらい、冬のかさばる上着が嫌いなのです。

 今日は一日中パソコンに向かって論文を書き続けていたため、腰が爆発しそうでした。ここ最近はずっとそんな感じです。夕方頃には腰が痛すぎてコルセット巻いてパソコンに向かっていました。命がけですね。しかしそのおかげでかなり進んで、あとは投稿先の雑誌を決めるだけです。本当は投稿先を決めてから書き始めるのがベターなのですが、どうしても決まらなかったので後回しにしながら書き上げたのでした。

 また、確定申告もようやく終えました。締め切りが3月15日なので今年はわりとギリギリでした。作成している時に、昨年までは気づかなかったとある「記入したら納税額安くなりまっせ欄」を、今年になって初めて気が付きました。だからきっと昨年まで多く取られていたことでしょう。なんじゃい。何千何万回と書いていますけど、納税する側が納税額を申告するシステム自体に問題があるのです。だから度々こういう事が起こるのでしょう。マイナンバでも何でも良いので、さっさとすべての支払いも給与も口座番号も全部紐付けたシステムを構築してほしいものです。AIによって納税額も自動で算出してくれるようなさ。まってるぜ管理社会。早く来い来いディストピア

 そして今週の水曜日には、4月からのオールナイトニッポン0の新パーソナリティ記者会見がやっていたので、作業をしながら見てました。水曜佐久間さん、木曜マヂラブはこれまでも欠かさず聴いていたので来年度も継続とのことでホッとしつつ、月曜火曜がフワちゃん&ぺこぱで、「オールナイトニッポン✕(クロス)やんけ!」と思ったのでした。良く言えば盤石の布陣、悪く言えば新鮮さ皆無の発表記者会見だったなぁ…(もちろん楽しみです)

 

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 日向坂46の新メンバーオーディションが日曜日に発表され、一週間ほどが経ちました。この数日の間にも、日向坂46のメンバーの方々がそれぞれ、ご自身のブログやメッセージに思い思いのことを書かれており、その一つ一つの文章に私は胸にグッときてしまっているのです。本当、歳を重ねる毎にこういうのに弱くなるのよね。新メンバーを迎えるということで、現メンバーは立場や期によって想いは様々だと思うのですが、共通して書かれているのは「日向坂を好きな人に入ってほしい」ということで、それはメンバーもファンも変わらない願いなのでしょう。

 さて、今回の新メンバーオーディションのキャッチコピーが「迷おう。それが始まりだから。」なのですが、このワードの懐の深さというか、包容力が凄まじいです。告知から一週間ほど経ったのですが、今更ながらじわじわとその威力を感じてきたのでした。

 生きていると、事あるごとに様々な選択肢にぶち当たり「どうしよう…」と迷ってしまうことが多々あります。受験だったり就職だったり、選択肢だらけです。もちろん今回の主題で言えばこの「アイドルのオーディションに参加するかどうか」というのもそうでしょう。しかし、「迷う」ということは、そこに自分の意志(というエネルギー)が介在しているということでもあります。ブレーキをかけるのにもエネルギーが必要なわけで、何も考えずに生きている人間は迷うことなんてないのだから。その、「迷う」という行為そのものを肯定してくれるこの言葉、包容力がすごくないですか?(いや、本当に)。目標があって、もうすでに前を向いて進んでいる人は、自分のエンジンで推進できます(それはもちろん素晴らしいことです)。ですが、そこまで自分をもっていけない人、大丈夫かどうか不安でいっぱいで押しつぶされそうな人だっているわけで、でもそういった迷っている人すらも肯定してくれる愛に満ちた言葉だと思うのです。そして、散々迷って悩んだ果てに「オーディションを受けない」ということを選んだとしても、その選択を人生にとって価値のある選択だったと思わせてくれる、そういう言葉でもあると思いました。

 この懐の深さは、日向坂46の歩んできた歴史があるからこそ、説得力を増しているのでしょう。もともと「けやき坂46」としてデビューしたはいいものの、なかなか日の目を浴びない日々が続いて「本当にこのままで大丈夫だろうか?」と迷ったり悩んだりして、それでもなんとか踏ん張ってメンバー全員で歩んできた歴史を持つ日向坂さんだからこそ、この説得力のあるキャッチコピーなのでしょう(詳しくは映画『3年目のデビュー』や書籍『日向坂46ストーリー』にて)。

 そして、この時代にも合っているような気もします。多様性の尊重されつつあるこの現代では、人生の選択肢だって以前よりもグッと増えています。いい高校に入っていい大学に入っていい会社に就職することだけが正解じゃなくなっている時代です。だからこそ迷うことも増えているわけで、そういう時代に合った素晴らしいキャッチコピーだと思ったのでした。

 

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