後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

ぽかぽか・細胞・乱気流

 3月15日。火曜日。今日も日中は暖かく、過ごしやすい一日でございました。先週末から気温も20℃前後を維持しているので、すっかり上着も不要となっています。その反面、すでに花粉が舞っているようです。私は花粉症ではないと自分に言い聞かせているので、花粉症ではありませんが。この時期になると目は痒くなりくしゃみもでるのですが、病院に行って花粉症だと診断されたわけではないので、花粉症ではありません。限りなくグレーかもしれませんが、花粉症ではないのです。鼻に差すタイプの薬を使うと楽になるのですが、花粉症ではありません。断じて。

 すっかり春休みとなっているので、大学構内も人気(ひとけ)が減っています。朝から来年度の講義資料の作成と、先日書き上げた論文とは別の論文の骨組みを考えているうちに夜になっていました。講義の主軸となる内容は毎年変わらないのですが、ここ数年は新型コロナウイルス感染症の流行もあって、ウイルスの話を講義に付け加えています。付け加える内容も一年ごとに情報が更新されていくので、話題が尽きません(今年はオミクロン株とかデルタ株の違いについてを追加する予定)。

 自然科学、特に生物学においては、こういった情報の更新が多いように感じます(もちろん物理学でも化学でもそうなのでしょうけれども)。例えば、一昔前の生物学の教科書では「人の細胞の数は約60兆個」とだいたい書かれていました。しかし、今はどの教科書でも「約37兆個」とされています(されていないのは出版社が見落としているか改定をサボっている)。一昔前においては、細胞の質量と人間の体重との比を使って概算で人間一人当たりの細胞の数を算出していたのでしょう。そりゃあ、細胞の数を一つ一つ、体全体の至るところまで数えきるのはとてもじゃないけど不可能ですので。もちろん、体のどの部分も同じような細胞の密度で、同じように細胞分裂をするのならそれでも良かったのかもしれません。しかし、残念ながらそんなことはなく、臓器によって細胞分裂の仕方や密度が異なっています。そこで、臓器ごとに細胞の数を算出した人が現れたわけです(これも想像するだけでもとんでもない労力です)。そのおかげもあって、今ではより正確な「37兆個」という数が使われるようになったわけです。

 こういった例は他にもありますし、また、同じ現象でもそれを指す言葉が変化している場合もあります(例えば昔は「優性」「劣性」だったのが今では「顕性」「潜性」となっています)。なので、教科書や学術書は基本的には新しいモノを使うのが良いのです(古本屋で昔の教科書が安いのはそれなりの理由があるのです)。

 さてそんなわけで、ためになる話をしつつ、1回目分の講義資料も無事完成したのでございました。

 

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 エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』を読みました。先月の頭に早川書房から出版されたばかりの作品です。エルヴェ・ル・テリエ氏はフランスの作家で、この作品もフランスでかなーり売れたそうです(なんと110万部!)。私は氏の作品は初めてだったのですが、帯の「SFとミステリの見事な融合」という陳腐(だけども悔しいほどに誘惑的な)な謳い文句に見事つられ、つい手にとってしまいました。正直、その謳い文句とカバーの写真とあらすじだけでも、読み慣れている人が見たら何が起こるのかはなんとなく想像がつきますし、私も想像通りでした(ふふん)。しかし、そういうことをとっぱらっても、まぁまぁ面白かったです。ただ、ミステリといいつつも、別に何か解決するわけでもないのでスッキリはしませんが。

 あと、ところどころウィットに富んだ皮肉が差し込まれていたり、作中の合衆国に対するイメージが「フランス人作家っぽいなぁ〜」とは感じました。大統領そんな阿呆ちゃうやろ…って感じの。

 物語の展開に触れずに感想を書くのが難しい作品だったので(その技術が私にはなかった)、これ以上は詳しくは書きませんが、「自分だったら意外とあんま気にせずに生きてけるやろなぁ〜」なんて思いながら読み終えました。THE 呑気。

 

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