後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

もしもブックス

 3月27日。日曜日。昨日は朝から夜まで大雨が降り降り続いていましたが、今日はうってかわって快晴の一日でございました。

 つい先日発売した小説現代の最新号(2022年4月号)で面白そうな特集がされていたため、手にとってしまいました。普段、文芸雑誌は購読しているわけではなく、なんだか面白そうな特集が組んであったり好きな作家が寄稿していたら買う、というスタンスです(出版社の狙い通りですね)。その結果、本棚には文藝や文學界小説現代SFマガジンが飛ばし飛ばしで並んでいます。我ながら節操のない下品な本棚です。

 

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 装丁のデザインもおしゃれで厨二心をくすぶる感じが良いですね(なによりピンクってのが良い)。そして、特集。「もしもブックス」なんてふざけたタイトル(小説ってだいたいもしもの世界を描いたもんやろタイトルもうちょっとなかったんかいな…)ではあるものの、書き手は盤石のSF作家陣です。特集名にもあるように、今の史実ではそうなってるけど、「もしもあの時〇〇だったら…」と想像を膨らませた短編が並んでいます。SFではベタなテーマではあるものの、どの作品も面白かったです。

 宮内悠介氏『パニック』は、1965年ベトナム戦争時に日本でSNS(今のツイッターをモデルにしているのかな)がもしもあったら…という作品で、世界初の炎上事件がテーマです。時代が違えど本当にSNSがあったとしたら本当にこういう感じのことが起こりうるんだろうな…と思いました。もっと積極的に国が管理してそうな気もするけれど。

 石川宗生氏『うたう蜘蛛』は死ぬまで踊り続ける奇病と、そこで「治せるぜー!」と現れた錬金術師がどうするか…という話。ファンタジィ感強めで、石川氏の作風(ユーモア)が随所に見られた作品。

 伴名練氏『二〇〇〇一週目のジャンヌ』はタイトルからもわかるようにループものです。ジャンヌ・ダルクが処刑されたその一日を繰り返すというもの。しかし、ただのループものではなく、SF的なアイデアと、氏の作品らしい情緒的な終わり方が読後感が良かったです。設定から『オール・ユー・ニード・イズ・キル』をほんのり思い浮かべました。

 そして小川一水氏『大江戸石郭突破仕留』。個人的にはこれが一番好きな作品でした。もしも江戸が石でできた堅牢な建造物の並んだ国だったら…という、なんでそんなん思いついたんや…というアイデアが素晴らしい作品。しかもちゃんと事件が起こって、その謎もスッキリ解明されるという、短編だとは思えないほどの濃度でした。キャラクターも魅力的だし。やっぱり小川一水ってすげぇや、あと時代小説(と言ってどうかわからないですが)も小川氏は書けるのか…なんて思いました。

 どの作品も面白かったので特集部分だけ買ったその日のうちにすぐ読み終わってしまいました。しかし、他の部分(特集以外のところ)どうするかなーというのがこういう文芸雑誌の買い方をしたときの困った点でもあるのでした。