後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

見納め

 11月14日。月曜日。よく晴れていて、また寒すぎることもなくちょうどよい気候でした。今年の秋はずっと調子がいいな…昨日一昨日はアイドルのライブを観に行きましたが、なめらかにナチュラルな日常が戻ってきます。きっとそういうものなんだろうな。神経をすり減らす日々の生活があって、たまにライブやイベントがあってエネルギーをもらって、そしてまた生活は続いていくものなんだろうな…

 ただ1個だけよくない効能として、今日も午前中に講義のお仕事があったのですが、壇上で喋っている途中土日のことを思い出して「この人ら(講義を受けてる学生)、なにを真面目なツラしてドルオタの話聴いてんだ…?」とふと思ってしまう瞬間が幾度かありました。構造に笑いそうになる。あまりよくないメタな笑い。

 午後から実験室に戻り、分析作業と来週の講義の資料をパパっと作りました。このへんはいつもどおりです。 

 

 最近読んだ本の話。今週はノンフィクションが2冊。

 

 清水幾太郎『日本語の技術』は何で知ったのかは忘れましたが、たまにこういった読む書く話すの指南書みたいな本を読んでいます。こういった類の本は、読んですぐに効果が現れるものではないのではなく、少しずつ馴染んでいくものなのでしょう(内容の一部でも頭の片隅に残っていれば)。サラダを1品追加するみたいな感じで、すぐに健康体になれるものではなくて。初版の発行は1977年で、内容的に少々古すぎる部分もありましたが、基本的には現代でも通用するテーマで述べられていました。

 ダグラス・アダムス&マーク・カーワディン『これが見納め』はつい先週河出文庫から出版されたのですが、これが本当に嬉しかった。10年ほど前にみすず書房から単行本が出て、でも当時は高くて買えなくて(たしか3500円くらいしてた)図書館で借りて読んだ記憶があります。そして、買おうかどうかうだうだ悩んでいるうちに絶版となってしまったのです。それが時を経て文庫版で出版されたのですから、本当に河出書房新書さんにはThank youの気持ちでいっぱいです。ダグラス・アダムスといえば、ご存知『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者です。そのダグラスと動物学者のマークが絶滅危惧種の動物を見に世界中を駆け回るノンフィクション・エッセイなのですが、めっちゃくちゃ面白いのです。なんなら私は『銀河〜』よりも好きかもしれません。絶滅危惧種が対象なので、こういった類の本はどうしてもシリアスな結論になってしまうのですが、そこはユーモアSF作家の豪腕っぷりなのか、人間の愚かさを嘆きつつ軽妙なジョークも交えていて、本当に全ページ面白いのです。今この瞬間だって何百種類の動植物が世界で絶滅し続けているのですが、ではなぜ絶滅は良くないことなのか。その問いの模範解答は「すべての動植物が環境を構成する必須の要素だから」とか「人類に有用な遺伝資源を持っている可能性があるから」になるのですが、そんなことはどうでもいいことで(どうでもよくはないけど)。結局、最後のマークの締めの言葉がすべてで「かれらがいなくなったら、世界はそれだけ貧しく、暗く、寂しい場所になってしまうから」なのでしょう。そんな愛に溢れたエッセイなのです。