後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

ライフハック・牛球・呪い

 「ライフハック」というワードが謎すぎて、見かける度に変な顔になります。どうやら「生活や仕事の生産性を向上させるための工夫や取り組み」ということらしく、インターネットでは様々なライフハック情報にあふれています。その範囲は多岐にわたっていて、便利家電の紹介からアプリケーション、効率的な食器の洗い方、メモのとり方、100円ショップの商品情報などなど、あらゆる情報が「ライフハック」に当てはまるようです(もはや「生活の知恵」と同義)。それだけライフハックが求められていて、逆にライフハック情報にライフがハックされているんじゃないかって感じてしまいます。あと、ライフハックといいつつその大半はただの商品紹介なわけで、資本主義は手を変え品を変えどこにでも潜んでいるなぁ、としみじみ感じるのでした。

 そんな7月31日(どんな?)。日曜日ですが、朝から体調がほんのりと悪く、でも体温も問題なしでコロナウイルス感染ではなさそうなので、ずっと家で過ごしていました。なので特に特記するような出来事皆無でした。体調よかったらジュラシック・パークでも観に行きたかったんだけども。

 最近読んだ本の話。今週はアンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー(上・下)』、柞刈湯葉『まず牛を球とします』、中川朝子『呪いを、科学する』を読みました。面白いSF3冊とそうじゃなかった新書1冊のペースでした。

 

 ようやく読みました『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。とはいえ買ったのは数ヶ月前でずっと積んでいたのですが、その間も様々なメディアやSNSで何度も紹介されていました。アンディ・ウィアーは映画『オデッセイ』の原作者で(原作名は『火星の人』)、その実力は折紙付きです。そんな著者の最新作なわけですから、そりゃ期待もかなりされていたのでしょうけれども、いや、めちゃくちゃ面白かったわなんだこれふざけんなよ。とある事象が原因で太陽光が弱まっていることがわかり、このままでは地球丸ごと滅亡してしまう…というところから物語が始まります。そんな地球を救うために、突飛な技術は出てきません。もちろん、未知の生命だったりが登場するのですが(それがSFの醍醐味でもあるわけで)、あくまでもそれに対処する手法は「科学」なのです(『火星の人』もそうだったように)。堅実な科学的手法で地球を救うために奔走するわけで(誤魔化されているところもあるかもだけど)、その解決方法に至るまでが鮮やかで素晴らしかったです。いつだって、地球を救うのに必要なのは科学とユーモアなんだと思わされます。あとダクトテープ。ダクトテープって本当、どこにでも何にでも使えるのなぁ…いやー面白かった。もうすでに映画化も決まっているようで、そちらも楽しみでございます。

 そんな『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を激推ししている作家でもある柞刈湯葉氏の短編集『まず牛を〜』も面白かった。過去に雑誌やらweb上に公開された短編がまとめられていて、雑誌や別のオムニバス短編集などに載っていたものは表題作含めてだいたい読んだことがあったのですが、それを差し引いても良い短編集でございました。その中でも、タマネギが嫌いという話(「タマネギが嫌い」)、人間のふりをする奥さんの話(「家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています。」)、歴史改変戦争モノ(「沈黙のリトルボーイ」)が好みでした(並べてみるとわけわからんなぁ…)。柞刈湯葉はやっぱり短編が光る作家だなぁ…としみじみ感じました。ちなみに表題作はタイトルのまんま球状の牛が出てくる話なのですが、私だったら鶏を球にして大砲で打ち上げて大空飛ばしてやりてぇなぁ…と、いらんことを思いました(岡野陽一さんのR1の時のネタみたいな発想)。

 『呪いを〜』は、本屋で見かけて「せっかくだから夏っぽい本も読むか…」と思って買いました。まぁよくよく考えると、夏だからオカルトってのも不思議ですがね(そういえば最近オカルト番組ってやってないなぁ…)。で、中身は古今東西の呪いとか奇病とか化け物と呼ばれているものを科学で解明していく、というコンセプトのものですが、これがまぁ合わなかった。普段、面白くなかった本のことを書くことってないのですが(どんな本でも面白い部分や新しい知見があるものですし)、それが皆無であまりに悔しくて愚痴を書いています。それこそ、本のコンセプトは面白そうだったのに、読み始めてみればただただ伝染病の紹介ばかりで、しかもどれも中途半端だし病気の原因は先天的なもの、で終わっているものばかりだし、これだったらウィキペディア漁っていたほうがマシでした(つまり「呪い」ってものは存在してないということなんでしょうけれども)。表題にもあっておそらくメインテーマである「呪い」の件についても、呪われていると考えている方(つまりは被害者側)が緊張状態のゆえカテコールアミン(アドレナリンとか)の分泌が高まってその結果心臓に負担をかけ、そして死に至ってしまったのでしょう、で終わっていて「まぁそんなもんだろうなぁ」という感想しかありませんでした。そして、本文は水増しのような改行ばかりだし、コラムのページは背景グレーで読みづらいし(怖さを演出してるのでしょうけれども)、これで1210円?と思わざるを得ない内容でした。本当に悔しい。おそらく一般向けということもあって深堀りして書かれなかったのでしょうし、あくまで私にとっては物足りないというだけなのかもしれませんが…いやでもこの内容で1210円はなぁ…