後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

ディックの話

 3月7日。月曜日。今日もほんのり寒く、風も強かった一日。なかなかゴワゴワ防風パーカーが手放せないでいます。抜群に暖かいけれどもいかんせん嵩張るので早くしまいたいのに。

 研究室に行く前に、愛車(スイフト君)がやたら汚れていたので洗車をしてきました。といっても、ガソリンスタンドの洗車機にぶちこむだけですけど。自動車を中で停めとくと、勝手にバカでかブラシがぐるぐる回転&移動して洗ってくれるアレです。あの機械、洗ってくれている間は車を停めて運転席で待っているのですが、車は止まっているのに外側の機械が移動するので、景色だけが移動しているようでなんだか気持ち悪くなります(洗車機酔いって多分あると思うんだよなぁ…)。おかげでスイフト君はピカピカになりました。まぁこの季節ですし、すぐに花粉と黄砂で汚れてしまうんでしょうけれども…

 あと、ついでにタイヤに空気もパンパンに入れてきました。凍結路面の心配があるシーズンは、空気圧を低めにして少しでも滑りづらくしていたのですが(本当に効果があるかは不明)、さすがにもう雪は大丈夫やろ〜?と調子こいて空気をパンパンに入れました。おかげでスイスイでございます。

 

 一週間ほど前、3月2日がSF作家のフィリップ・K・ディックの命日でした。なんで今さらそんな事を書くかというと、早川書房の公式ツイッタで、そのことをツイートしていたことを思い出したからです。

 

 

 こういう、ちょっと前のことをふとしたタイミングで急に思い出すことがよくあります。

 ディックといえば、日本でもめちゃくちゃ有名なアメリカのSF作家で、著書では『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や『流れよわが涙、と警官は言った』がよく知られていることでしょう。実はそのことについてずっと思っていることがあって、それは「電気羊が本当にディック1冊目に読むのに適しているか問題」です。日本ではおそらくタイトルのスタイリッシュさも相まって『アンドロイド〜』が一番有名でしょうし(他の小説や映画にもよく登場するし、タイトルをパロった作品もたくさんあります)、名作なのは間違いないと思うのですが、全くディックの作品を知らない人が1冊目に読むとしたら、「本当に合ってんのか〜?」なんて思うのです。「ディックといえば電気羊」と言われがちですが(出版社もそう売り出しているのをよく見ます)。電気羊は「人間とアンドロイドの違い・区別」みたいなものがテーマになっている作品ですが、全体的にけっこう淡々としているし(私の印象)、ジメッとした終わりですし、「なんや有名やから読んでみたけどこんなもんかいな」と思ってしまうのではないか、と私は密かに心配しているのです(余計なお世話)。どっちかといえば、原作よりも映画の『ブレードランナー』(電気羊が原作)のほうがわかりやすく面白いと思うのです。

 あるいは、私が全くディックを知らない人に向けて選ぶなら、断然『ユービック』や映画版の『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』が、展開も面白くて最後まで飽きずに読める(観られる)のではないかな、なんて思うのです。あと『ユービック』は裏表紙の紹介文がモロのネタバレになっているので本編を読む前に読んではいけません(これ、もはやユービックあるあるです)。

 また、よく見かける「初心者におすすめのSF小説〇〇冊」みたいな、もはやオリジナリティもなにもないブログ記事で、ひどいものだと『ヴァリス』を挙げているものもあります。記事を書いた人は本当に作品を読んだんかいな、と思わずにいられません。『ヴァリス』はディック晩年の作品で(『ヴァリス』『聖なる侵入』『ティモシー・アーチャーの転生』でディック三部作とも呼ばれる)、ディック自身が精神的にイカれて幻覚が見えたりもした体験を元に書いた作品です。作中には日本人に馴染みのないグノーシス主義や神学的な話がふんだんに出てきて、読んでいる途中に「なんじゃいこれ!」と思うことででしょう。そんな癖のある作品を初心者にすすめるんじゃねぇ!と私はぷりぷりと怒っているのです。

 しかし、じゃあ『ヴァリス』がつまらない作品かというと、そんなことはなく、私はディック作品の中ではトップ5に入るぐらい好きです。陰鬱で救いのない物語ではあるんですが、そもそもがそういうじっとりした作品が好きなのでしょう(これはもう個人の好みの問題です)。たしかに話の途中でわけわからんくなることもあって「なんじゃいこれ!」と思うこともありますが…(ちなみに『聖なる侵入』『ティモシー・アーチャーの転生』は『ヴァリス』よりもぐっとわかりやすいです)。

 そんなことをふと思い出した今日一日でございました。これまで散々書いてきてアレですが、ちょっとでも気になったものを手にとって読んでみるのが良いのですがね。

 

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 最高にクールなヴァリスTシャツも持っている。