後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

過マンガン酸カリウム

 1月26日。水曜日。最近は寒い日がずっと続いていましたが、珍しく今日はほんのりと暖かかったです。そう思っていたら夜になるとやっぱりクソ寒くて、「まだまだ冬だな」と当たり前のことを当たり前の顔をして呟いていました。

 今日は実験室で試薬をいくつか作製しました。といっても、計算して量って水に溶かすだけの誰でもできる作業でしたが。なんの面白みもない作業工程ですが、時折、重金属を扱うときだけ水溶液に鮮やかな色がつくので、ちょっとだけ楽しいです。それ以外はだいたいは無色透明なので。小さな楽しみです。しかし、重金属を含んだ試薬は捨てるときが面倒くさいのです。毒性があるので廃液をそのまま排水溝に流すことができません。ポリタンクなどにためておいて、ある程度溜まったら業者に引き取ってもらいます。こういった規制は年々厳しくなっているような気がします。一昔前、農場のクソでかインキュベータを消毒するために、過マンガン酸カリウムとホルマリンを使っていました。過マンガン酸カリウムにホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)を加えるともくもくと煙が発生するのですが(酸化されたギ酸?)、これに激強の殺菌効果があるのです。しかし目はしみて痛くなり吸い込むと咳き込んでしまうくらいなので、おそらく人体にはかなーり悪かったことでしょう。もちろん環境にも。簡単で比較的安価でできる昔ながらの消毒方法なのですが、きっと今では許可されないことでしょう。そんなことを思い出しました。

 

 先日購入したパラニュークの『サバイバー』、気がついたらあっという間に読み終わっていました。うーむ、面白かったです。面白かったですけど、面白いからといって安易に人に勧められないような、そんな感じの作品でした(そもそも人に本をすすめることがめったにないですが)。背表紙に「SNSに内容を書けない本」とあって、「あぁ、なるほどそういうことか」と納得しました(こういう煽り方はあまり好きではないのですが)。人間は生まれ育った幼少のときの記憶や環境にその後の人生も左右されるもので、しかもその力は無意識的だけど呪いのように強力なものなんだな…と感じました。読み終わった後に凹んでしまうくらいの読後感。面白かったけど二度と読みたくないような感覚です。あと、『ファイト・クラブ』もそうでしたが、パラニューク作品を読むといろんな豆知識を得られます。服についた血液の汚れの落とし方とか石鹸の作り方とか。それが作者の知識のひけらかしのように感じて鼻につく、という人もいるそうですが、私は好きです。そんな『サバイバー』でした。爆売れして他のパラニューク作品も再販に至ってほしいものです。

 以下、その他で最近読んで面白かった本。

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 ニール・シュービン『進化の技法』。

 生物の進化についてはダーウィンの『種の起源』の影響力が大きいけれども、生物の進化ってのは急に起きたわけではないというのが主題の本。魚類が陸に上がるためには肺が必要だし、鳥類が空を飛ぶためには翼が必要だけれども、それらは急にできたわけではなく、もともともっていた特性を別の使い方をするために転用したり他の生物(ウイルスや菌類を含む)から盗用していった結果であったり、遺伝子はもともと備わっていてその調節の仕方を変えているにすぎない、という感じのことが書かれています。新しい知見があったわけではないのですが、これまでの研究者の発見の歴史をストーリー仕立てに解説しているのがわかりやすくて面白かったです。

  

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 谷川健一『沖縄の憑依民俗学』。

 「憑依民俗学」という文字を見て「イタコみたいな存在が沖縄にもいたのかー」なんて感じで何気なく手にとりましたが、思っていたよりも壮絶でどぎつかったです。この本には神が乗った女性の地獄の苦しみが書き綴られているのですが、読んでいてこれが本当に現実の話なのかフィクションなのかわからなくなる感覚になりました。こういった話は今なら脳科学で説明つけられそうな気もするのですが、その一方でそれだけでは説明しきれないような神秘性を感じてしまうのも、沖縄という土地の性質なのかもしれません。大変面白かったです。