後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

雪・列車・旅

 2月8日。火曜日。先週末は珍しく大雪となり、翌日になっても雪が残り続けていました。さすがに今日になるとほとんど解けてなくなっていましたが。しかしながら、先日の日曜日は運悪く積雪&凍結した道路をどうしても運転しなくてはならない羽目になってしまい、ヒヤヒヤでした(凍結路面だけに)。しばらくはスピードも出さず慎重にトロトロちんたらと運転していたわけなのですが、「なんや意外と行けるもんやんけ」と調子こいた矢先、交差点を左折できずスリップしながら直進してしまうやべぇ状況を迎えてました。いやはや、肝を冷やしました(凍結路面だけに)。左折もできないし、ブレーキも効かないし、「南無三!」って感じで交差点に突っ込んだわけです。幸い事故には至らなかったわけですが、本当にね、あぶちゃんでした。その後はそれ以上に慎重に運転するようになり、自宅にたどり着いてからあまりの怖さにうずくまって寝ました。次にタイヤ交換する時は絶対にオールシーズンタイヤにしてやろうと心に決めました。

 

 もう一つ、先週末の話。先日土曜日にショッキングなニュースとハッピーなニュースを同時に食らって、ぐちゃぐちゃな気分でした。ハッピーな方は、私の好きな芸人さんに第一子が生まれたというニュース。こちらはラジオでの発表で、まさにリアルタイムに聴いて知りました。で、もう一個のショッキングなニュースは、私の好きな作家さんが急死したというニュース。これはね、正直凹みました。どんな素晴らしく読者に影響を与える作品を生み出したとしても、人間であるかぎりやっぱり死んでしまうものなんだな、と。当たり前のことなのかもしれませんが。そして死んでしまったら、やがて人々からも世間からも忘れ去られしまうんだろうな、と勝手に想像し、落ち込みました。先週末はそういう日。

 

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 高山羽根子・酉島伝法・倉田タカシ『旅書簡集 ゆきあってしあさって』を読みました。東京創元社から先月末に出版されたばかりの本ですが、文章自体はWebでも公開されているとか。「旅書簡集」とあるように、形式としては、三人の作家がそれぞれ架空の国や土地へ行き、そしてお互いに手紙でやり取りをしているという、へんてこな体の作品です。それぞれ三人が訪れるのは、泥にまみれた街であったり、戦争ごっこを続けている国だったり、半端に日本文化が入ってきてしまった国だったりと様々。個人的に特に面白かったのは、外出禁止令が唐突に出てしかもその制限区域が雨雲のように移動するため、その間は車(タクシー)を走り続けていないといけない国(何を書いているかわからないでしょうけれども、本当にそのまんまなのです)。今のこのご時世、海外旅行どころか、国内ですら移動するのはちょっと躊躇してしまうわけですが、想像力さえあればどんな国へも(それがたとえ架空の土地だったとしても)自由に行けるんだな、としみじみと感じました。これって今流行りの「メタヴァース」の究極形なのではないでしょうか。しかもハイスペックなコンピュータもいらないし。そんなことをふと思いました。

 架空の国(都市)を扱った作品としては、ギョルゲ・ササルマンの『方形の円』やイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』が有名ですが(『見えない都市』は私は途中で挫折しましたが…)、この『ゆきあってしあさって』は、それぞれの作家さんがそのまま主人公として他の作家さんに手紙を送り合っているのです。「手紙」というものは不思議な媒体で、読む側にも追体験をさせ、時も空間も超えて同じフィールドに持ってこさせる効果があるように思うのです。なので、フィクションだとわかっていても、「でももしかしたらこういう国もあるのでは?」と思わせてくれるのです。その感覚がとても心地よい。そんな作品でした。今年読んだ作品の中でもトップクラスに面白かったです(まだ一ヶ月ちょっとしか経っていませんが…)。

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 酉島伝法氏の訪れる場所がどこもかしこも不穏で禍々しくて、それぞれの土地で酉島氏がひどい目にあっているのが、さすがというか、やっぱりなぁ…という感じでした(氏の他の作品から容易に想像できるし、おそらく読者もそれを求めていたことでしょう)。