後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

かつて天才だった俺たちへ

 つい先週8月26日にリリースされたCreepy Nutsの新アルバム『かつて天才だった俺たちへ』をようやく今週になって買うことが出来た。なかなか買いに行くタイミングがなかったものの、なんとか発売初週ギリギリに買えた(どこまで効果があるのかはわからんけど好きなアーティストのCDはなるべく初週に買うようにしている)。

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 これがま〜〜〜良いアルバムで、昨年の『よふかしのうた』も最高に良かったのだけど、さらに増量してぶちかまされた感じだ。菅田将暉さんとのコラボ曲『サントラ』はオールナイトニッポンでのラジオ内のトークがきっかけで作られた曲で、当初配信リリースされて以来頭イカれるほど聴いてきたけど、改めてアルバムに入ると感慨深い。昨日も珍しく録画したMステを観て「うわぁかっけぇ…!」とずっとぶつくさ呟いていた。その感覚でMステを観たのも中学生ぶりだったと思う。歌にしろ芝居にしろ言葉にしろ、表現することを介して観ている者に何かを感じさせられる人間ってめちゃくちゃカッコいい。ちなみにMVも激アツなのだ。

 


Creepy Nuts × 菅田将暉 / サントラ【MV】

  

 そんなヘビー級の曲があるのにも関わらず、このアルバムの凄みはそこだけにとどまらない。同じく菅田将暉さんとのコラボ&カバー曲『日曜日よりの使者』も素晴らしい。もともとは2018年のVIVA LA ROCK 2018で披露されたハイロウズのカバーである。バックバンドも豪華で、凛として時雨のドラムの方やスカパラのギターの方も参加している。すげーな。原曲は最高に良いんだけど(もちろん皆さんご存知だろう)、それにマッチしたラップの歌詞もめちゃくちゃ良い。

 そしてそして何よりも表題曲『かつて天才だった俺たちへ』がエグい。エグエグのエグ。大学のCMソングということもあって、未来へ向けた希望とか成長とか、そういったことも曲のテーマになっているんだけど、決してそれだけではない痛みのようなものを伴っている。タイトルにもあるように、誰しも子供の頃は何かしらの天才だったし何者にもなれるような可能性に満ちあふれていたわけだ。それが、年齢を重ねるにつれて嫌でも自身の不可能性を味わわせられる(それが「現実を見る」ってことなんだろう)。ある日ふと「あれ、実は自分は天才ではなかったのか…」と痛感させられる時がやってきてしまうのだ。そんな不可能性・有限性が自己を形成しているといっても良い。選択肢はどんどんとすり減っていき、代わりに「上手く行かねーな」と思うことは山のように積み重なっていく。だが、そこで飲み込まれてしまうのも(それが決して悪いわけではない)、それでも何かを追い求めていくのも、どちらも結局は自分自身が決めることなのである。何かを選ぶってことは別の何かを選ばないということなんだろう。生きていくってそういうことなんだろうな。そんなナイフとエールを同時に浴びせられる感覚になった。すげー曲だぜ。エグエグのエグ。

 


Creepy Nuts / かつて天才だった俺たちへ【MV】

 

 今回のこのアルバムは、どちらかというと20代〜30代前半の大人に刺さるような曲が多いように感じた(個人的には『オトナ』『日曜日よりの使者』『サントラ』そして表題曲『かつて天才だった俺たちへ』が特に)。それはきっとCreepy Nutsがそういう年齢だからということもあるのだろう。感じたことや思ったこと、あるいはムカついたこととか、そういったリアルを詞にして曲にして表現し続けているアーティストなので(きっとヒップホップってそうこうことなんだろうな)、Creepy Nutsとほぼ同じ年齢の私は刺されっぱなしだ。やっぱり同世代のアーティストっていいなぁ、とアルバムを通して感じた。

 また、そんなアルバムの中で『Dr. フランケンシュタイン』はがらりと雰囲気が異なる。兎にも角にもR指定さんの歌い方がめちゃくちゃセクシィ。そして甘い。ぜってーモテるやつ。このアルバムの中で唯一少し浮いた印象を受けるのは、この曲だけは主人公がフィクションだからだろう。フランケンシュタインに作られてしまった怪物が主人公だ。前アルバムにも犬が主人公の『犬も食わない』という曲があったのだけど(人間に飼われている犬と野生の犬が喧嘩し合うという曲。これも超良い曲だ)、そういった誰か(フィクションであっても)を主人公においた歌詞を書けるのってすげーな(そしてそれがとんでもなくフィットしている)、とただただ感服させられる一曲だった。

 その他の楽曲でも、『ヘルレイザー』と『耳無し芳一Style』は作曲・編曲(トラック?アレンジ?)がめちゃくちゃ渋くてカッコいい。世界一のDJ、松永氏の才能なんだろうな。ごくたまにCreepy Nutsについて「曲調が古くさい」みたいな感想を見かけることがあるのだけど、それを見て私は毎回「いや新しさあってのクラシカルさだろそれがわからんかねぇ〜〜〜〜???」と心の中で思うのだ(決してそれに対して顔真っ赤にしてリアルに反応はしない。その行為がだせぇこともわかっているぐらいには大人なのです)。

 


8/26リリース ALBUM「かつて天才だった俺たちへ」ティーザー

 

 そんな感じの捨て曲無しの激強アルバム『かつて天才だった俺たちへ』の話でございました。