後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

『ナゼー』は令和の方法序説

 つい先日、日向坂46の4thシングル『ソンナコトナイヨ』が発売されました。表題曲が素晴らしいこと、ジャケットがとんでもなく可愛いことは万人の知るところなので今さら言及はしないのですが、そんな4thシングルの中でもC盤に収録されているカップリング曲『ナゼー』が個人的にすごーーーく刺さったのでそれについて書きたいなぁ…という記事です。

 この『ナゼー』を歌う松田好花さん(このちゃん!)、東村芽依さん(やんちゃる!)、河田陽菜さん(KAWADAさん!)の3人は、現在放送中の日向坂46主演ドラマ『DASADA』内で出てくるアイドルユニット「FACTORY」を演じています(ドラマが大変面白いことはまた別の記事にでも…)。そのFACTORYの持ち曲として制作されたのが『ナゼー』であり、FACTORYはドラマ内で唯一無二の最強クリエイティブアイドルユニットとして登場しており、そういった経緯もあってこれまでの日向坂楽曲とはがらりと雰囲気が違っております。

 


日向坂46 『ナゼー』Short Ver.

 

 明らかに某テクノポップ三人組ユニットを意識したようなメロディ、ダンスの振り付けなどなど、それだけでもこれまでの日向坂楽曲を知っている方は「おっ!」と思うのですが、この楽曲の凄みはそこにとどまらないのです。あとどうでもいいですけど、Youtubeに上がっているオフィシャルのフルMVがシングル発売とともにショートバージョンになるの、なんとかならんか?とずっと思っています。『ナゼー』も、間奏のダンスシーンとか、衣装が変わったり背景がどんどん鮮やかになっていく流れが大好きなのに、それがバッサリ見られなくなるのは「なんだかなぁ」と思うのです。そりゃCD買えば特典Blu-rayにMVも付いてきますけどさぁ…

 閑話休題。『ナゼー』の話に戻ります。この曲はそのまんまタイトルにあるように、様々な自然の事象・現象に対して「なぜ?」と問いかけていく歌詞となっています。「なぜ、花は咲くのだろう」「なぜ、蝶は飛ぶのだろう」と、一貫してこの構造が続いていきます。素朴でありかつアイドルソングらしい可愛い歌詞となっているのですが、可愛らしさだけじゃない底知れなさを感じずにはいられないのです。

 年を取り大人になると、当たり前のことが当たり前のように起こり、その当たり前に疑問を挟むことすら少なくなっていきます。そうすることによって効率の良い生き方を獲得できているのであり、それは一種の最適化・自動化ともいえます。たしかに何も知らないことを恥だとも思わなかった子供の頃と比較すると、疑問を持たないことは生きやすいかもしれないけれど、ふと、でもそれって寂しいことなのでは?と思ってしまうこともあります。あれほど世界は疑問に溢れていて、好奇心はそのまま自身の原動力になり得ていたはずなのに。

 「我思う、故に我あり」で有名なデカルトは「良識はこの世でもっとも公平に分け与えられているものである」と『方法序説』の冒頭で書いています。「良識」とは「物事の考え方」ということです。社会には色んなしきたりとかルールが設定されていて、常識にあふれていて、その常識に沿うことがすなわち正しいこととされています。常識を疑わないことが上手く生きるための条件みたいになっているのですが、それって本当に楽しいことなの?とも同時に感じるのです。誰しもがハテナを頭に漂わせていた頃があったはずなのに。そりゃ、スマホで検索すれば答えはすぐ出てくるでしょうし、だからこそ「なぜ?」と思うことが少なくなってきた理由なのでしょう。でも、世界に対して「なぜ?」を感じて、その些細な「なぜ?」を大切にして、そして自分の頭を使って考えることって、世界の鮮やかさを保つために必要なことなのかもしれません。そんなことを『ナゼー』を聴いていて思いました。もしかしたら『ナゼー』は世界を楽しんで生きるためのアドバイスなのかもしれません。「なぜ?」「わからない!」と世界に対して叫ぶことは、人間だけにできる知的な行為なのですから。

 また、個人的な話になるのですが、これは現在、研究というものに携わっている自分にとっても耳の痛い話であったりもします。研究とは世界の「なぜ?」に立ち向かう行為であるはずなのに、いつの間にか論文生産が主目的になりつつあるのです(仕方ない部分もあるのですが)。もっと純粋に、得られたデータの紡いだ直線の意味だけを考えていた頃が自分にもあったはずなのに。研究の意義とか何に役立つかなんてどうでもよくて、ただ面白いからという理由だけで何日間もパソコンの画面に向かっていた日々があったはずなのに。『ナゼー』は、そういった、不思議を楽しんでいた頃の気持ちを思い出させてくれるのでした。

 

 

 …なんだかよくわからない固い文章になってしまったので、最後に『ナゼー』のMVに出てくる世界で一番可愛い研究者さんの画像を貼っておきますね。

 

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かわいい(かわいい)