後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

日のあたる坂道

 健康な身体を保つためには、陽の光を浴びることが必要だ。今更何を当たり前のことを、と思われるかもしれないけれども、これがけっこう忘れられていることである。特にこの現代社会、陽の光を浴びなくても生活をすることはできるのだけれども(それでも生活をすることができる、ということが社会が技術的にも豊かになったということなのかもしれないけれど)、それでも浴びた方が健康には良い。実際のところ、カルシウム代謝に作用するビタミンDというこの物質は、太陽の紫外線によって皮膚で合成される。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収に作用し骨の形成に関与している。すなわち、適度に紫外線を浴びることが健康な身体を維持するためには必要というわけだ。

 適度に日の光を浴びることは身体の健康に必要であるわけだけど、これは身体だけじゃなくて心の健康にも似たような関係が成り立つだろう。この世の中は上手くいかなかいことの方が圧倒的に多いわけであり、生きていると腹が立ったり凹むことも数え切れないくらい出てくる。少しぐらいのストレスであれば大して気にもとめないかもしれないけれども、それが積り重なってくると、やはり精神的には良くない状態に陥ってしまう。特に、自分のようなネガティブ方向に転がりやすい場合だと(そういう自覚はある)、少しの気の疲れがいつの間にか致命傷になっている可能性だってありえるのだ。そんなときに、心を活性化させてくれる紫外線のような、日の光のようなものがなにか一つあると、それだけでもずっと生きやすくなる。そんな心の紫外線は人によって当然違うだろう。身体を動かすことかもしれないし、何かに没頭することなのかもしれないし、あるいは好きな音楽や映画を観ることだって心を健康に保つための手法になり得る。

 前置きが長くなってしまったけれど、要は何が言いたいかというと、つい先日、日向坂46のライブに行ってきてそれが素晴らしく良かったという話です(随分と遠回りをしたものだ)。

 先週の木曜日、日向坂46の3rdシングル発売記念ワンマンライブを観てきた。といっても現地のさいたまスーパーアリーナに行ったわけではなく(平日だったし地方民には難しい話です)、地元映画館でのライブビューイングにての参加だ。

 自分にとっては実はこれが初めての日向坂46のライブだったのだけど、結論から言うとものすごく良かった。言葉にしてしまうと呆気ないのかもしれないけれど、言葉で表せられない以上の、あるいは言葉に代えがたい熱量の詰まった計り知れない何かを全身で受け止めたような気分だった。

 さいたまスーパーアリーナというめちゃくちゃ広いステージで、サイリウムでいっぱいの客席を前に全身全霊のパフォーマンスをしているアイドルの姿は、もうそれだけで胸にグッと来るものがある。日向坂46は、下積みの時代を経て今年の2月にけやき坂(通称ひらがなけやき)から改名したばかりのグループだ。ライブの時点でCDを2枚リリースしており、他にもモデルや舞台やラジオやテレビなど多方面で活躍しているアイドルグループだ。そんな激動の中を駆け登っている真っ最中にも関わらず、ライブのステージでの彼女たちはひたむきで、全力で、そしてこれでもかってぐらいのハッピーオーラを振りまいていたのだ。

 人間はストーリーに弱い。もしかしたらそういう舞台や演出が大人によって狙って作られているものなのかもしれない(別に悪いと言っているわけではなく)。でも、それでも、やはりステージに立っているのは彼女たち自身なのであり、観せられるのは楽曲やパフォーマンスにこめられた彼女たちの生き様なのだ。彼女たちから発せられるハッピーオーラはそのまま力強く観客まで届く。クラクラするような眩しさは熱に変換されファンの心臓を暖め、そして活力となり明日を生きるための血肉ともなり得るのだ。そしてその愛と幸福に満ちたオーラは決してステージからの一方通行ではなく、声援として、祈りとして、客席からもまたステージへと送られる。このインタラクティブな愛の連鎖はステージを埋め、会場を埋め、そして世界を埋めていく。ハッピーオーラに満たされた世界は優しくて美しくて、そして生きることを肯定してくれるのだ。

 そんな日向坂46のアイドルとしての力強さを感じた凄まじい体験だった。ライブが終わった直後は映画館の席からしばらく動けなかったし、帰りに車を運転している最中も頭の中は楽曲が鳴り止まないし、語彙は追いつかないし、いや、ほんと、素晴らしいライブだった…

 その週のオードリーのオールナイトニッポンのエンディングで、日向坂のライブについて春日さんが「強いライブだった」と話していたけれど、まさしく、そんな力強いハッピーオーラを頭から爪先まで体全体で浴びたようなライブでした。なんというか、色々と自分も頑張ろうと思いました。ベタな感想だけれども。

 

 3rdシングル『こんなに好きになっちゃっていいの?』、もちろん買いましたとも。