後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

涼しい・動き・農

 8月21日。日曜日。夜はちょっとだけ涼しくなってきたような感じもする今日このごろです。まだ冷房はやめられないけど。今年は雨が多いので比較的涼しい日が多いですね。

 今週はあまり書ける内容もなかったので、最近読んだ本の話。

 

 マット・ウィルキンソン『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか』は、もともと単行本が発売されたときに「そのうち読もう」と欲しい物リストに入れていたところ、あっという間に数年たち文庫版が発売されてしまった本(このパターンめっちゃある)。生物進化について解説した本はこの世に山ほどあるわけですが、どの視点からスタートするかは書き手によって様々です(外部環境の変化であるとか、遺伝子の変異とか)。その中でも、この著者は「移動運動」について着目しています。その主題は徹底されていて、脳すらもメインは移動運動の器官であって、思考・理解・共感・意識といった私たちがまず想像する神経系の機能はおまけにすぎないと言い切るわけです。考えてみれば、地球の環境はこれまで変動を繰り返してきたわけですが、物理法則だけが変わらず等しく存在しているのです(生物の歴史スケールでは)。なので、生物の姿・形の進化を語るときに物理の影響は大きいわけですが、そこについて詳しく説明した本ってのはあまりなく、それを最新研究を交えてつつ解説しています。そして、動物の形についてだけでなく「なぜ植物は動かないのか」とか「私たちはなぜ動きたいと思うのか」など幅広く、どのトピックスも読み応え十分な一冊でした。欲を言うなら文章だけでは想像しづらい箇所も多かったので(訳のせい?)、もう少しイラストもあると良かった。

 窪田新之助『農協の闇』は、そのタイトル通り、農協(いわゆるJA)の告発本。最近読んだり見てきたあらゆるホラー作品よりもずっと怖い。…と、冗談をいいつつ、私の家は農家だったので、農協に関する良くない噂は昔からじんわりと伝わってきていました(自爆営業とか高額の保険プランばかり勧められる話とか農協なのに農作物を他よりも安く買い叩かれる話とか)。ですが、農家の知っている農協はその地域にかぎった農協だけなので、他の地域の農協が同じようにヤバいかはわからないわけです。で、読んで思いましね、「あ、うちの農協はまだマシだったんだ…」と。それぐらいヤバい話のオンパレードな本でした(特に東北の農協支部が終わってる)。

 私は農学部卒で、学部卒で農協に就職する人もちょくちょくいたのですが、だいたい数年で辞めています。農家出身からしたら農協に就職するなんて絶対ナシな話(それぐらいイメージが悪い)なのですが、こういったヤバい情報もちゃんと伝わっていたらそういった悲劇も生まれなかっただろうなぁ…と思ったのでした。