後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

土地の名前

 今年の春先のこと、私の所有している土地を貸してほしいと頼まれました。頼んできた人は最近こちらの地域に引っ越してきた方で、家とは別に利用できる土地を探しているとのこと。私の家は昔から農家だったので(今はほとんど人に任せている)、農地は町内にもポコポコと点在しており、その中にはほとんど手をつけていない農地(いわゆる放棄地)もいくつかあります。そしてその放棄地の一つを貸してほしいとのことだったのだが、こちらとしては何にも使っていない土地だったので「あぁ、いいっすよ〜」という感じで簡単にOKしたのでした(賃借料も入るし)。

 そんなわけで簡単に契約書を作り契約をし「不労所得ゲットだぜ」なんてぬかしていた頃、役場の産業課から電話が。

 「〇〇さん(私)、□□の土地なんですけど、何に使われてます?」

 「はい!不労所得を得てます!」なんて答えることもできず、とりあえず詳細を聞くために役場へ行きました。

 すると、どうやらその土地の地目は畑で登録してあって、それを別の用途で使うためには地目変更・農地転用の手続きをしなくちゃいけないとのこと。そのまま使うと罰金やらなんやらが科せられるとのこと。おいおいそんな金ねーぜ。

 一応、その貸す相手の人は建物を建てるつもりはなく(そもそも地目が畑だから建築許可が下りない)、周囲をフェンスで囲いたいぐらいのことは聞いていたので、その旨を話しても「だめですね」の一点張り。融通聞かねぇ。

 私「じゃあその土地の一部に樹でも生やしとけば畑として利用できるのでは?」

 役場「いやそれも無理ですね」

 と話は平行線。「なんじゃいこっちは年間なんぼ固定資産税払っとると思ってんねん!」なんてセリフが喉元まで出かかったけれども、ぐっと我慢して「では農地転用の手続きをします」と引き下がることに。大人だからね。善良市民だからね。

 で、その申請手続をすることになったのだけど、この手続が本っ当にクソ面倒くさかった。申請書類自体は大したことはなく、法務局に公図や土地全部事項証明書をもらってくるのはネットで申請・郵送発送ができ、土地利用計画書(その土地をどう利用するのか、の計画書)は相手方さんにCAD使って作ってもらったので余裕でした。そうやって集めた書類をもって意気揚々と役場に再び出向くことに。しかしなんで役場は平日しかできんのかね。せめて電子申請かメールで申請書を送れるようにしてもらいたいところ。令和だぞ。

 「これで文句ないやろ?」という顔をしながら役場の担当者と対面すると「今回は仮申請になり、問題ないか県に協議をかける」とのこと。それもよくわからないのだけど、ここで突っかかっても心象が悪くなるだけなので我慢して(なぜなら大人だから)了承。結果は二週間後に連絡するとのことで、その日は退散しました。

 で、二週間後。役場から「問題ないです」との連絡。そこから本申請に移るわけだけど、そこで今度は農業委員会の担当委員さん2名から了承の署名が必要とのこと。なんだか面倒な予感がし始めたのはここからです。産業課がやってくれるのかと思ったらそんなわけはなく、連絡先だけ教えてもらい、あとはそちらでやってくれとのこと。はぁ〜〜〜〜〜〜。

 文句を言ってても仕方ないので農業委員会の担当委員さんに連絡し、土日(しか私が動けない)にアポをとって家を尋ねることにします。すると今度は、住んでいる地区の区長さんの了承をとってくれたらいいですよ、とのこと。なんだかたらい回しにされているような気もするけど、そもそもこういった農地転用の申請自体、前例があまりないので簡単にOKしづらいのでしょうね。何かあったときに「誰がOK出したのか」と責められることを心配されているのでしょう。農業委員会といっても組織しているのは普通の農家さんですしね。そんなわけで区長さんにまたアポをとって出向き、転用する土地の説明をし了承をもらい、改めて農業委員会の担当委員さんのところに行き、ようやく署名を貰うことに。いやーなかなか面倒だった。

 で、今度こそ文句ないやろ〜と思っていたところ、役場の産業課から、農地転用の申請とは別に土地改良区への申請も必要だとの連絡を受けます。なんそれ。いやなんそれ!「いやはじめに説明しとけや!」とブチギレそうになったのもぐっと飲み込み(大人だからね、飲み込むのには慣れているのです)、詳しい話を聞きに再び役場に行きます。

 私自身未だに把握しきれていないけど、どうやら農地転用の手続きの他に、土地を農地から除外するための手続きだとのこと。なんで担当が違っているのか全くもって理解不明だけど、そうなっているのならしゃーないので(日本人の悪いところ)、改めてそっちの書類も作ることに。そしてその申請に今度は土地改良区の担当理事2名の署名が必要とのこと。例によって役場からは連絡先だけを教えてもらい(本当なんもしてくれねぇのなぁ〜〜〜)、またまたそれぞれの人にアポをとって署名をもらいに行きます。

 そうやって署名を貰いに行ったりするだけで、トータルで2ヶ月ほどかかりました。で、なんとかそっちの書類や署名も集めて、これにてようやく完了。意気揚々と、そして産業課に対する静かな怒りを胸に携えながら産業課に集めた書類を持っていきます。すると今度は「転用申請前に土地の一部を掘削(フェンスを建てるための穴を掘った)しているので、始末書を作ってくれ」「あと申請書の一部を直してくれ」とのこと。「いやだから最初に説明しとけや!!!! んでなんのための仮申請だったんや今更!!!!!!!!」と、さすがに寛大な心を持った私も再度ブチギレそうになります。でも飲み込みます。飲み込みすぎて胃のサイズも大きくなりましたわ。

 いや、本当、申請書を持っていく度に平日の時間を潰していました。トータル7、8回くらいは役場に出向いたのではないでしょうか。なんだろう、暇だと思われているのでしょうかね。結局最後は役場に行くタイミングがなく、始末書やら修正した書類は郵送で送りつけましたが。

 そんなわけで、土地の名前ひとつ変更するだけなのに、その手続きがメタクソに面倒だったというお話でした。きっと申請の方法は自治体によりけりなんでしょうけれども、そりゃ日本各地で耕作放棄地が減らないわけです。