後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

またもや我々はエモ死させられたのであった(日向坂46『飛行機雲ができる理由』MVの感想文)

 先日の4月19日のこと。日向坂46さんの7thシングル『僕なんか』のカップリング曲『飛行機雲ができる理由』のMVが公開されました。もうね、タイトルが発表された時点で「あ、これはやべぇ曲だわ」って思いましたね。絶対エモい曲。そんなんわかってんだからこっちは。なめてもらっちゃ困るっつーの。MV公開前からクリエイタチームもガンガンにハードルを上げていましたし。

 で、当日になってついにMVが公開されたわけなんですが、予想ド的中の素晴らしい作品に仕上がってやんの。ふざけやがって。上げたハードルをジェット機で丸ごと吹き飛ばしていったような感じ。私は深夜3時頃にヘトヘトで帰ってきてから拝見して、あやうく骨も残さず浄化されるところでした。

 


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 まるで70年代のようなレトロな雰囲気漂うこのMVのストーリィは、陽だまり寮という名の寮に住んでいるメンバーたちが、寮が 取り壊しになるということで最後にお別れ会(ダンスパーティ)を開く、といった内容。言葉で説明しちゃうとものすごくシンプルなんですけど、解像度が凄まじい。いや見てもらった方が早いんですわこれ…

 7thシングル表題曲『僕なんか』のMVでは、メインテーマを「小坂菜緒さんの復帰」というところに置きつつも、「自分で(僕なんか、と)構築してしまっていた世界を自らの手と仲間とでぶち壊し、新たな世界へ一歩踏み出す」みたいな普遍性も残していたように感じました。そのような普遍性を残すことはファンだけでなく大衆にヒットするためには必要なことだと思います。だから『僕なんか』が表題曲であるわけで。まぁそもそも御託はどうでもよく『僕なんか』もMVも曲もとんでもなく素晴らしいのですが…

 

sibainu08.hatenablog.com

(以前に書いた個人的な感想)

 

 で、今回の『飛行機雲ができる理由』では、そんな普遍性を完全に取っ払って、これまで日向坂46というグループを愛しメンバーを愛してきたファンに向けた、まるでご褒美のような作品だと感じました。これまでの歴史があって、念願だった東京ドーム公演を経て、卒業を発表するメンバーもいて、そして新たに4期生が入ってくる、今のこのタイミングでこの22人のメンバーがいてからこその。

 そもそも「寮」という設定がエモいです。第一エモポイントです。通常、寮というのは学校に通うために一時的に身を置く環境であって、時間が経てば卒業する人もいるし、また新たに入ってくる人もいるわけで、そういう流動的な環境なわけです。「アイドル」という存在も同じで、どれだけファンが愛していても、いつかは卒業することが確定しているわけです。だからこそ尊くて美しくて、その生き様やステージで輝くパフォーマンスにエネルギーをもらうのかもしれませんが。

 このMVでは寮生が卒業するのではなく寮自体が取り壊しになる、というストーリィになっているのですが、言わんとすることは同じでしょう。そうやってグループ自体、変化し続けるものです。だけれども、このMVで私が一番「こんなん素敵すぎやろ…」と思ったのは、終始メンバーずっと笑顔なところなんですよね(これ!声を大にして伝えたいの!!!)。今まで暮らしてきた「陽だまり寮」が取り壊しになると知っても、そこで悲しみに明け暮れるのではなく、じゃあ最後にと、お別れ会としてダンスパーティをやってしまう。こんなんめちゃくちゃ日向坂46やん。これこそ日向坂46やん。そしてもちろんMV自体はフィクションのストーリィなんでしょうけれども、同時に、直近で渡邉美穂さんが7thシングルを持って卒業を発表された今の状況じゃないですか。まさに。当然、未だにそれを受け入れられず寂しく思うファンもいるでしょうし、渡邉さんが卒業され、そして4期生が入ることでグループ自体が変わってしまうかもしれないことに戸惑いを感じるファンだっているかもしれません。ですが、メンバーはすでにその環境の変化を受け入れ、笑顔で送り出す覚悟をしているぞ、というファンに向けたメッセージであり決意表明のようにも感じたのでした。

 いやはや、凄まじくエモーショナルなMVです。とんでもない威力。

 最後の一行がまたグッとぐるんだわ。

 

 

 今この感想文を書きながら思いましたけど、タイトルにもある飛行機雲だって停止している機体には現れないですものね。飛行機雲は必ず飛行機が通った後に残るもので、でも私たちは空に残った飛行機雲を見て、その場にいない・そこからもう去ってしまった機体のことを想像することができるわけです。飛行機雲はやがて散乱して消えていくものだけれども、飛行機雲が残存しているその時だけは、そこに同時にいた飛行機のことを思うことができるのです。このMVも、いつか振り返って見た時に、「そんなことあったな」といつでも今の時間に戻ってこれるわけで。

 それはまさにアルバムをめくるのと同じ作用なわけで、あぁ、だから作中で小坂さんがメンバーの写真を撮っていたのか…と、とめどなく続くエモの連鎖です。エモが止まらねぇぜ。MVの最後には、22人で集合写真を撮るシーンがあるのですが、ここで「22人での最後のシングルなんだな」という現実を突きつけられるのです。でも、写真のメンバーがみんな笑顔でいることがすべてなのでしょう。応援するファン側も、最終的にはその心構えでいたいものです。今はまだ難しくても。

 

 すごい一枚ですよこりゃ。右側に3人ぐらい入りそうなスペースが空いているのも…いや野暮ですね。全部説明するのは。

 

 また、このMVはそういったストーリィだけでなく、随所に日向坂らしさが詰まっているとんでもない濃度の映像作品になっているわけです。以下好きなシーンの羅列(ただのファン目線です)。

 

 冒頭10秒ほどでいきなり見せつけられる、復帰した小坂さんと卒業される渡邉さん二人きりのシーン。こんなんDASADAやん。
 

 

 寮に現れたアイツに対し素手で立ち向かう上村さんと、それを外に逃がすシーン。影山さんの避け方が妙にダサくて、でもそれも本人っぽくて良いです(ド失礼)。

 弾き語りをする花ちゃんズ(松田好花さんと富田鈴花さん)と、そこに加わり、真・花ちゃんズ結成を目論む高本彩花さん(想像です)。

 

 動きがダサかわいい丹生ちゃん。にぶちゃんはリアルでも未だにフラフープで遊んでそう。休みの日とか。

 長電話に非難轟々のメンバーと、そんなことは気にしないにぶちゃん。潮さんの表情が素晴らしい。特に眉。おそらく潮さんは眉の角度だけで喜怒哀楽が表現できると思う。

 


 パーティに向けて部屋を飾り付け中、渡邉さんがまず一人で踊りだすと、それが広まりやがて全員を巻き込んでしまうシーン。きっと実際にも渡邉さんがグループの中ではそういう存在だったんだな、と想像せずにはいられません。

 

 

 そんな全方位爆撃型の激エモMVでございました。この『飛行機雲ができる理由』、歌詞だけをみると感傷的な詩になっています。別れの詩であるように読み取れますし。

 

 サビのこの部分とか…

微笑んでた 君がある日 振り向いたら泣いてたなんて
そんなことって あるのかなって 僕は不安になった
飛行機雲って 自分じゃ何も 気づかないうちに 雲を作って
だからこんなに なぜか切ない 景色に見えるのかもしれない 

 あとこことか。

愛しさを(永遠と)言えないのなら
僕たちは(ああ何を)信じればいいんだ

 しかし、MVを見るとわかるようにメンバーみんなが終始笑顔で、切なさが希望に変えられているわけなんですよね(だからより切なさが強調される、というのもあるけれど)。これは日向坂46のカラーであり魅力であるのだと思いました。いはやは、発売がますます楽しみでございます。

 

 ちなみに飛行機雲ができる理由は、燃料を燃やして生まれた水蒸気が外に排出される時、上空の低温&低気圧環境のための瞬間的に氷になるからです(興ざめな余談を最後に)。