後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

エミュー

 3日ほど前、熊本県の牧場からエミュー20羽が脱走したというニュースが流れていました。どうやら今もなお3羽が脱走中らしい。

 

news.livedoor.com

 

 ネット上には地震と脱走を関連付けた阿呆記事なんかもアップされていますが、「いや地震とか関係なく出口開いたらそら出てくこともあるやろ…」などと私は思いました。それにしても去年今年と色んな動物が脱走しますね。ニシキヘビとかサーバルキャットとか知らないでかい鳥(ミナミジサイチョウ)とか。

 エミューといえば少し前、インスタグラムで私が鳥図鑑(通称トリスタグラム)を作っていたときに紹介したことがありました。その鳥図鑑(通称トリスタグラム)は20種ぐらい書いて「いやこれ推奨されているインスタグラムの使い方と違ぇな」と思ってすぐやめましたけど。しかし、そのときのメモがEvernoteに残っていたので、せっかくなので(エミューも脱走したことですし)、こちらのブログにも加筆修正して載せていこうかと思った次第です。

 

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エミューヒクイドリヒクイドリエミュー属)
学名: Dromaius novaehollandiae

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 飛べない鳥の一種であり、ダチョウについで世界で2番目に大きな鳥である。地味な見た目であるが、人に慣れやすい性格と繁殖のしやすさから日本各地の動物園で飼育されている。

 エミューは前進しかできないことから、オーストラリアでは国家成長の意を込めて国鳥に指定されている。しかしその一方でオーストラリアは1932年には害鳥としてエミューの大量殺戮を行った歴史もある(通称エミュー戦争)。なんとも人間とは自分勝手な生き物なのかを思い知らされるが、当時、ただでさえ世界恐慌の煽りを受け小麦価格が下落していた西オーストラリアキャンピオン地区においては、そんなこともいってられない事情があったのだろう。繁殖期を経て元気いっぱいのエミュー2万羽は農作物を食い荒らし、ブチギレた農民たちは支給された機関銃をぶっ放したのである。しかし、大した効果もあげられず、失敗した国策として今もなお語り草となっているのであった。そんな恥ずかしきエミュー戦争が、ここ最近のエミュー脱走のニュースとともに日本で再びピックアップされている(主にネット界隈で)とは、オーストラリ人も思っていなかったことだろう。陰湿だぜジャップ。それにしても、一方で捕鯨には反対しつつ、その一方ではエミューもカンガルーも駆除しまくっているのは、なんともまぁって感じがする。ちなみにオーストラリアではエミューの脂肪から抽出した「エミューオイル」なるものまで売っている。筋肉疲労や炎症に効果があるらしい。繰り返し書くがエミューは国鳥である。なんともまぁ。
 さて、前述のようにエミューは見た目が地味であるが全国の動物園で見ることができる。写真は静岡県掛川花鳥園にいたエミューであるが、色合いも鮮やかさに欠けているし目つきも悪いし羽もところどころ抜けていた。きっと他のエミューにつつかれたのであろう。この掛川花鳥園は屋内と屋外のエリアに分かれているが、エミューがみられるのは屋内エリアを抜けてさらに屋外エリアの奥の奥である。屋内エリアではインコやエボシドリといった華やかな鳥たちが客から餌をもらいさえずっている一方で、エミューは吹き曝しの飼育エリアの隅でただただじっとしていた。しかも私が訪れた日はあいにくの雨であり、わざわざ屋外の奥まで見に来る客もほとんどおらず、閑散とした雰囲気であった。そのあからさまな待遇の違いを間近で見せつけられ、何か胸の奥に込み上げてくるものを感じた。何だこの違いは。エミューだって同じ鳥ではないか。せめてこれだけでも…と思い、私は有料のエサを買ってエミューに与えたのであった。情けによるものだとはつゆ知らず(そんなことは知らなくていいのだ)、エミューは軽快に寄ってきて、ガシガシとエサを食べていた。エサにがっつく姿、つぶらなひとみ、かわいいじゃないか。

 今のエミュー脱走のニュースだってそうだ。人間は「危険性はどうなのか?」「大丈夫なのか?」と不安な声だけをピックアップしてニュースとして取り上げる。これが華やかな別の鳥や違う動物だったらそうはなっていなかったことだろう。脱走した牧場の関係者のインタビューをみてほしい。「多少は(ストッパーが)噛んでいたんですけど、あまりにも力が強いんでガッと来られて、バコっと開いてしまったという感じ」(牧場関係者)。 「まあイノシシとか鹿とかおるけんね。それに比べたらおとなしい方じゃない?」(現場を見ていた近所の人)。

 …おおらかな土地だなぁ。