後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

本とか本とか

 7月15日。木曜日。今日は雨がずっと降り続けていた一日。だいたい阿呆みたいに暑いか雨の降り止まない一日が続いていますね。夏って感じです。一日の過ごし方は代わり映えしないのですが、ようやくワクチン1回目の接種をしてきました。モデルナ製です。副反応がどんなものなのかほんのり心配しておりましたが、接種した場所が少しだけ痛んでいるのと、接種した直後に吐き気を催したぐらいで、あとは無傷です。よゆーでした。2回目の方が副反応が強いらしいですが、はたして。

 昨日は芥川賞直木賞の発表がありました。芥川賞受賞の李琴峰氏の『彼岸花が咲く島』を「なーんか知ってんなぁ…?」と思っていたのですが、文學界3月号に載っていたのですね。珍しく購入済みでした。もともとは國分功一郎先生と若林さんの対談記事目的で買ってたのですが、まさか伏線回収(?)するとは。その時はパラパラ流し読みしてしまっていたので、せっかくなので再読しましょう。

 

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 あと、これはどうでもいいことなのですけど、『彼岸花が咲く島』というタイトルだけ見て「彼岸島が受賞!」なんてつまらない事をつぶやいちゃう人は100ワニ映画の悪口大喜利もやってそうだな、と思いました(勝手な想像)。

 また、直木賞で佐藤究氏が受賞していたのが「ほぉ!」って感じでした。文学賞の選考基準は全く詳しくないのですが、佐藤さんの作品ってバイオレンスなモノが多いイメージだったので、そういった作品もとれるんだなぁーと思いました。未だに純文学と大衆文学の違いもよくわかっておりません。

 本の話が続いてしまったので、もうひとつ。先週末に購入した樋口恭介氏の『未来は予測するものではなく創造するものである』を読み終わりました。樋口氏は第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を『構造素子』で受賞して作家デビューされた方なのですが、この『構造素子』が私には後頭部打ち付けるぐらいの衝撃で面白かったのです。作品自体のストーリィも面白いし、何より文体のリズム?がすごい好みでした。読み心地が良いというか。おそらく音楽をやられていた方なのでしょう。

 さて、この『未来は〜』は小説作品ではなくてビジネス書に分類される本なのですが、これもまた面白かったです。最近少しずつ耳にするようにもなってきた「SFプロトタイピング」という手法をビジネスに応用していきましょう、という本(ざっくり要約)です。樋口氏は兼業作家で、コンサルタント会社に勤務されています。この本はその経験のこともたくさん書かれていたのですが、読んでいるうちにビジネス書からにいつの間にかSFの書き方の本になっていったのが面白かったです。私にも書けそうだぜ。正直、私は「企業コンサルティング」という言葉にはちょっとうさんくさくて息苦しい印象を持っていたのですが、そのアレルギーもほんのりと払拭されました。自由に未来をあれこれ想像すること、それ自体が自由を再構築し、自由を獲得するための手法にすらなりえる、ということが述べられていて、もしかしたら啓蒙書にも近いのかもしれません。あまり、というかほとんどビジネス書を読まない私ですが、最後まで面白く読めました。おそらくこの人は、SFを、そして小説を愛しているのでしょう。物語を愛し、物語の力を信じ、物語によって紡がれる未来を願っている。その深い愛と希望が随所ににじみ出た、そんな本でございました。

 また、これは私の勝手な願いですが、樋口氏にはそろそろ長編を出してほしいなぁ、と。『構造素子』以降、短編作品は色々な雑誌やアンソロジーに出されていますが、やっぱり長編もそろそろまた読みたいのです。評論集『すべて名もなき未来』も読みましたから(こっちも面白かった)。そんなことを思った今日のこのごろです。

 

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 あと樋口氏の作品は表紙デザインがどれもめたくそオシャレ。ずるい。