後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

ファンタジィとリアルの交差点(『ひなくり2020~おばけホテルと22人のサンタクロース~』の感想のようなもの)

 つい先日、12月24日に行われた日向坂46さんの無観客配信ライブ『ひなくり2020〜おばけホテルと22人のサンタクロース〜』を観ました。その感想文のような記事です(恒例のやつです)。

 ということで配信ライブですけど、日向坂46さんの配信ライブも今年は4回目になるでしょうか(間違ってたらすみません)。もはやお馴染みのスタイルですが、今回も素晴らしかったです。いや本当に良かったぁ…(しみじみ)

 昨年の「ひなくり2019」はたしか2日目が配信でも観ることができたのですが、今回は完全に無観客での配信ライブとなりました。本来であれば「ひなくり2020」は東京ドームでの開催が告知されていたのですが、さすがにこのご時世のため延期となり、代わりに配信ライブという形となったわけです。しかし、代わりといっても日向坂46の配信ライブの演出やカメラワーク等の素晴らしさは夏の配信ライブでも堪能していたので、今回ももちろん期待しておりました。いやー良かった(そればっかり言ってます)。昨年のひなくり2019や夏に行われた配信ライブ(Live Online, YES!with YOU! ~“22人”の音楽隊と風変わりな仲間たち~)でも感じたように、日向坂46さんのライブはまるで絵本のようなファンタジィな物語に楽曲やダンスがマッチしていて、さらにそこにAR等による演出技術が存分に使われており、配信でも全く飽きさせない作りになっているのが素晴らしいです。

 配信直前、現在休養中の宮田愛萌さんの影ナレからスタートしたひなくり2020ですが、今回は昨年のひなくり2019の続きのようなストーリィでした。早速サンタクロース衣装に身を包んだメンバーが登場し『NO WAR in the future』が披露されます。『NO WAR~』はけやき坂46ひらがなけやき)からの曲ですが、新三期生も参加した体制となりました。はるよちゃん(山口陽世さん)がちっちゃくて可愛かったです。はい。そのまま『ドレミソラシド』でも生歌を。お馴染みのシングル曲ですが、センター小坂さんの強さを改めて感じました。ふりつけの最初、指揮者役の小坂さんがくるっとまわって正面を向くところが、なんというか圧倒的です。あといつもはブルー系統の制服衣装の『ドレミソラシド』が赤いサンタクロース衣装で歌われるのも新鮮で良かったです。また、『ドレミソラシド』は振り付けの中でメンバー同士が交差する場面が多いので平面ステージとの相性が良いですね。

 さて、今回の物語では1年前のクリスマスで手に入れた空色の卵から孵った青い鳥、ポカ(口が悪い。あとなぜか小坂さんやおたけ(高本彩花さん)、お寿司(金村美玖さん)だけを贔屓している。いったい誰なんだ…)が登場します。ポカによると、この世界には一週間朝が来ておらず、それはどうやらおばけホテルにいる王の仕業とのこと。そんなわけでサンタクロース一行はおばけホテルを目指すことになります。

 サンタクロース衣装から探検隊(ガールスカウト?)のような衣装に着替え、メンバーたちは『ただがむしゃらに』を歌いながら迷路のような道をぐんぐん進んでいきます。会場一面や客席の合間をもステージとして使えるのは無観客ライブでの醍醐味なのでしょうね。それにしても『ただがむしゃらに』の歌詞、めちゃくちゃ好きなんですよねぇ…前も書いたかもしれませんが。

 一行が道を進んでいくと、その道の途中で旅人がひとりギターを持って座っています。もうね、この時点で「うわぁ〜〜!!!」となるわけですよ こっちは。この後の展開を予測してしまって。旅人役のすずちゃん(富田鈴花さん)は、旅に出た相方を待っているとのこと。そしてそこに現れる同じく旅人姿の松田好花さん。なんちゅう演出をするんや…って感じですよこっちは。本当にもう…!松田さんは目の病気で9月頃から活動を休止して療養中でしたが、まさかこのひなくり2020で復帰となるとは…(ちょっとだけ期待はしていました)そして、久しぶりに揃った花ちゃんズは『まさか、偶然…』を弾き語ります。もうね、目が真っ赤ですよ。『まさか、偶然…』は失恋を歌ったような切ない曲ですが、歌詞がいろんな状況とリンクしているようで、色々と胸にくるものがありました。

あれから一年か もう会いたくなる

時間の過ぎ方 あやふやで 長くて短い

 一年前のひなくり2019では二人がそれぞれが客席の中に配置された離れたステージで弾き語りをしていましたが、今回は二人が並んで歌っています。また前述のように松田さんは活動を休止していたこともあって、今回の『まさか、偶然…』で活動を復帰されるということには、おそらく色んな想いがあったことでしょう。アイドルが休養期間を経て改めて復帰するのって、我々が想像を絶するほどの覚悟が必要になることでしょうし、当然そこには色んな人からの期待も一緒に乗っかってくるはずです。それはもう尋常じゃないほどのプレッシャーでしょう。だからこそ、そのアイドルという生き方や生き様自体にファンは感動を覚えるのかもしれませんが。いや、本当、目頭真っ赤でしたよ私は…このちゃんおかえりなさい…

 さて、旅人同士の感動的な再開を後に、サンタクロース達は道を進んでいきます。すると今度は崖で道が分断されています。しかしそんなピンチも、河田さん(河田陽菜さん)がワニの船長に時計をあげることで、船を出してもらい進めるようになります。ここで歌われるのが『川は流れる』。崖と崖の間に船を挟んだようなステージで披露される『川は流れる』は演出も相まってより壮大なスケール感で、めちゃくちゃ良かったです。あとそもそもこの曲めちゃくちゃ好きなんですよねぇ…

 崖を越えると火山にたどり着くのですが、ここで登場する嘘つきオオカミをみーぱん(佐々木美玲さん)がいい具合にちょろまかして、雨を降らせることに成功します。これでさらに進むことができます。歌われる『どうして雨だと言ったんだ』齊藤京子さん加藤史帆さん佐々木美玲さんの歌声が魅力的で、あと単純にユニットとして強い。すげーかっこいいんです。ARで会場に雨も降らせたりして。

 そんなこんなで一行はなんとかおばけホテルに到着します。おばけにサンタクロースであることがばれないように、メイド服(メイド服といってもクラシカルな気品のあるタイプのメイド服で、そこも良かったです(個人的好みの話です))に着替えての『ソンナコトナイヨ』『こんな整列を誰がさせるのか?』『Dash&Rush』と怒涛のダンサブル曲が続きます。そして、何よりこのおばけホテルのセットがすごい。日向坂さんのライブでも最大級にでかいのではないでしょうか。ダンジョンのように入り組んだホテル内部を、おばけに追いかけられながらメンバーが歌い踊りながら駆け抜けていきます。カメラワークも複雑で凝っていて、ただただ観ていて楽しいです。あと『整列〜』は懐かしい曲ですね。古参ファンもにっこりだったのではないでしょうか。

 ホテルのとある部屋の扉をひよたん(濱岸ひよりさん)が恐る恐る開けると、そこではでっかいおばけが現れます。ですが、それも三期生4人による『この夏をジャムにしよう』で本当にジャムにしてしまいます。無敵です。『この夏〜』はピュアでフレッシュでキュートな曲ですが、おばけをぶっ叩いてジャムにすることもできるのです。三期生って強い。しかしその後、おばけホテルの中で迷ってしまったひなのサンタ(上村ひなのさん)が、回転扉に吸い込まれ、角をはやしたおばけひなのにすり替わってしまいます。

 さて、サンタクロース一行はおばけホテル内を駆け回っていたはずが、いつの間にか砂漠のようなところに飛ばされてしまいます。ライブではすっかりお馴染みとなったすずちゃんのラップを挟んで、窓を開けられない臆病なラクダと出会います。そこでラクダのためにランプを擦ってあげて、そのおかげで再びトロッコに乗っておばけホテルに向かうことができるようになります。トロッコに乗りながらの『窓を開けなくても』が歌われます。穏やかで良い曲なんだよなぁ…

 おばけホテルに戻ると、なおみくコンビ(小坂菜緒さんと金村美玖さん)が、おばけひなのとおばけが話しているのをうっかり聞いてしまいます。どうやらおばけひなのちゃんがサンタクロースたちの位置をおばけたちにこっそり教えていたようです。…とりあえずそんなことはスルーしてなおみくコンビはユニット曲『See Through』を歌唱します(他はまだスムーズだったのにここだけ曲名との繋げ方が力技だな!と感じました)。それにしてもこの曲のなおみくコンビ、本当に尊いです。もはや信仰対象。

 さて、おばけホテルの最上階、ホテル王のいる所に到着するためには告げ口しているメンバーをあぶり出さなくちゃいけないわけですが、そこでネコの探偵の力を借ります。どうやらおばけひなのだけが写真に写っていないようで、バレてしまったおばけひなのがメンバーから逃げながらの『キツネ』が披露されます。これがめちゃくちゃ楽しい。『キツネ』は前回の配信ライブではキツネチームとタヌキチームのダンスバトルのような演出がめちゃくちゃ楽しかったですが、今回はひなのちゃん主役大暴れの『キツネ』で、毎回趣向を凝らしたパフォーマンスがとても面白いです。

 さてさてその一方で、本物のひなのサンタは書斎でおじいちゃんからもらった大切な本を見つけます。そして披露される『一番好きだと言っていた小説のタイトルを思い出せない』。上村さんがARで投射されたおばけ達とステージに立ちます。これがもうね、圧巻のパフォーマンスでした。昨年のひなくり2019でも披露されましたが、その時は「がんばれ…!」て思ってしまう部分もあったのです(もちろんその時もたった一人でステージに立つ姿はかっこよかったですが)。しかし一年経って、上村さんが去年よりも堂々とした立ち振る舞いで、その姿がめちゃくちゃかっこよかったです。いやはや、こんな最年少おるんかいますげーなぁ…

 さて再びサンタクロース一行の場面に切り替わると、有能なネコの探偵にとしちゃん(加藤史帆さん)が恋をしてしまい、『キュン』が披露されます。原点にして頂点。何度もステージを観てきましたし、昨年は紅白でも歌われたデビューシングル曲ですが、やはり今回も強かったです。なんだかんだ名曲なんだなぁ。そしてサンタクロース達はエレベータでさっきまでは無かったはずの44階に昇ると、そこは火の海になっていました。これではおばけホテルの王の場所にたどり着けません。「そういやポカの野郎、全然助けてくれんやんけ!(※意訳)」とぶちぎれみーぱんが挑発的な表情を見せ、『My fans』が披露されます。『My fans』は日向坂46楽曲の中でもなかなか尖った曲だと思いますが、こうやって物語の中にもぶち込めるものなんだなぁ…と感心してしまいました。パフォーマンスをしているメンバーの、他の楽曲ではなかなか観られない扇情的な表情が映える曲です。

 さて燃え盛った炎を前にして困っていると、これまで助けてきたワニの船長やオオカミが現れて火を消してくれます。前回の配信ライブの時にもありましたが、助けた仲間が最後に現れるジャンプ的胸アツ展開。そして『誰よりも高く跳べ!』が披露されます。毎回『誰跳べ』のイントロでは色んなネタが放り込まれているのですが(カスカスダンスやストレッチャーズ、はっぱ隊等)、今回はマイケル・ジャクソンのスリラーのあの振り付けでした。私なんかは「なるほど、おばけホテルだもんなぁ〜〜〜」と画面の前で膝を叩いたのですが、よくよく考えたら若い十代のファンには伝わらないでしょうねぇ…(それを言い出したらはっぱ隊だってそうですが 笑)そしてこの『誰跳べ』が個人的にめちゃくちゃ良かったです。セットの空間的な広さを存分に使っていて、最強にかっこよかったです。ステージ下から「跳べ〜〜〜〜!!」と飛び出すキャプテンも超良い。無観客であることを忘れてしまうくらいの煽りで、熱量がえげつなかったです。

 そして、やっとのことでおばけホテルの王の部屋までたどり着きます。そこではポカが捕まっていました(捕まっていても変わらず口は悪い)。ホテル王は可愛いものが苦手なため、サンタクロースたちはぶりっ子で王を倒そうとします(なぜそうなる、いや、日向坂さんならそうなるわなぁ〜って感じでした笑)。ぶりっ子って強い。アルバムリード曲『アザトカワイイ』によって見事ホテル王を倒した後は、再びサンタクロース衣装を身にまとい『JOYFUL LOVE』が歌われます。『JOYFUL LOVE』は客席からの綺麗な虹色のサイリウムが映える曲です。今回の無観客ライブでも客席の一つ一つの席に置かれたサイリウムが遠隔操作されて、虹が再現されていました。そして「またみんなのにじがみれますように」というメッセージも流れ、ハッピーエンドを迎えます。実はおばけホテルの王もそんな悪いやつじゃないことがわかり、めでたしめでたしです。その後はスタッフロールが流れながら『日向坂』が披露されました。何百回聴いてもド名曲ですし、これ以上エンディングにふさわしい曲もありません。大団円。

 一旦幕が下り、アンコールでメンバーが再びステージに登場します。そしてまずは『青春の馬』が歌唱されます。先日のひなリハ動画がアップされたのも記憶に新しい『青春の馬』ですが、やはり力強く拳を振りかざしたり足を踏み鳴らすパフォーマンスは勢いを感じます。『青春の馬』の後のMCではメンバーから様々なこの配信ライブの感想が語られました。ひなくり初参加となる山口陽世さんの「日向坂には入れて幸せです」という感想がなんだかぐっと来ました(その後のお姉さんメンバー達の「いい子だねぇ〜〜〜」も含めて 笑)。そしてそしてステージに松田好花さんも呼び込まれ、改めて活動を再開することを述べられていました。もうね、再び目頭真っ赤ですよこちらは(仕方ない)。話を振られた渡邉美穂さんが「22人で揃ってステージに立つことは当たり前のことなんかじゃない」と語られていましたが、本当にそうなんですよね。どれだけグループが順風満帆のように見えても、アイドルでいる限り休業や卒業はありえるわけで、またアイドルを応援するということはそういう未来を受け入れるということなんですよね。

 そしてキャプテン佐々木久美さんがファンに感謝の言葉を述べて、最後の曲フリに。もちろん『約束の卵』でライブを締めくくります。去年東京ドームでの公演が発表されて、その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期になってしまったわけですが、やはり22人が東京ドームのステージに立つ未来をファンは望んでいるのです。ツアーも休止になってしまったりと、色んな当たり前にあるはずだったことが当たり前じゃなくなってしまった現在ですが、それでも、そんな中でも前を向いているアイドルの表情ってのは素敵ですし、その姿はひたすらに強いです。来年、約束の地でライブができますように、そう心から思った『約束の卵』でした。

 

【セットリスト】

01. NO WAR in the future 2020
02. ドレミソラシド
03. ただがむしゃらに
04. まさか、偶然...
05. 川は流れる
06. どうして雨だと言ったんだろう?
07. ソンナコトナイヨ
08. こんな整列を誰がさせるのか?
09. Dash&Rush
10.この夏をジャムにしよう
11. 窓を開けなくても
12. See Through
13. キツネ
14. 一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない
15. キュン
16. My fans
17. 誰よりも高く跳べ!2020
18. アザトカワイイ
19. JOYFUL LOVE
20. 日向坂

アンコール
21. ⻘春の馬
22. 約束の卵 2020

 

 『ひなくり2020〜おばけホテルと22人のサンタクロース〜』という一つの作品・パッケージとしての完成度は言うまでもなくめちゃくちゃ高かったのですが、そのファンタジィな世界観や設定の中で、フィクションだけでなくリアルな部分も混ぜ込んであるのが凄まじいな、と感じました。旅人(松田さん)が相方の元に帰ってくる場面なんてまさにそうで、現実に松田さんが活動を復帰されることとリンクしています。また上村さんが昨年と同じ『一番好きだと〜』をソロで披露されたことだって、曲は同じですが、一年という期間を経てより堂々とした立ち振る舞いとなっているのは得も言われぬ感動がありました。『約束の卵』の意味だって去年とはまた違ってきます。ライブのサブタイトルに「22人」としっかり表記していることだって、日向坂46というグループの性質を感じとれます(夏の配信ライブでも表記されていました)。

 そういった、一つのファンタジィな作品であることにプラスして日向坂46というグループの現在がステージに濃縮されているような、そんなライブでした。作品と現実の境界線は曖昧になって、でもだからこそ、観ている人には物語以上の何かを訴えかけることができるのでしょう。改めて、素晴らしく素敵なライブでございました。