後ろ向きには最適の日々

雑駁なあれこれ

爽やか歯医者

 歯医者が相変わらず怖い。カレンダーを見る度に治療の日を確認しては鬱々としていたのだが、今日がその2回めの治療の日だった。本当に行くのが嫌で嫌で、ギリギリまで「なんとかバックレられないか」「なんとかならんか」と思案していた。まぁ実際にはバックレれるほどの勇気もないので、結局行ってきたわけだが(大人って本当に大変)。

 で、治療となると奥歯をガリガリと削られるわけなのだが、本当、なんで歯医者ってのは麻酔を渋るんだろうか。というか最初は麻酔なしで削ってきやがった。当然、激痛が走るわけだから体がビクン!となり、それを確認してようやく麻酔を注射しだすのだ。馬鹿か。最初からうってくれ。しかも何を渋っているか知らんけど、少しだけうって、それが足りないもんだからまた激痛で体がビクン!となるのだ。「あら〜麻酔の量足しますね〜」じゃねぇ。最初から十分な量でやってくれ。なんなら口いっぱいになみなみと麻酔を注いで欲しい。麻酔でタプタプにしてほしい。そうすれば2回分の激痛も体ビクンもいらなかったのではないか。それぐらい歯を治療される時の痛みが嫌いなのだ。

 でもそんな文句は言えない。なぜなら主導権は歯医者側が握っているからだ。少しでも愚痴を口に出してしまえば、きっと余計ガリガリ削って痛みを加えてくることだろう。不機嫌になった院長に治療していない健康な歯まで穴を開けられてしまう。あるいは歯の裏のところにドリルで院長の名前とか彫られてしまうかもしれない。歯医者の持つドリルはマフィアのピストルと同義なのだ。歯科医院の中で歯医者が一番の支配者なのだ。患者側にはなんの権限もない。ただブルブルと恐怖に震えるしかないのだ。

 そんなわけで、ひたすら恐怖に震えながら治療を終えてきた。本当に生きた心地がしない一時だった。歯を削られる度に体がガチガチになるほど力を入れてしまうし、治療が終わった頃には汗びっしゃりだった。いやはや、久しぶりにあんなに汗をかいたもんだ。ヘトヘトになって歯科医院を出ると、爽やかな風が通りぬけていった。夏はもう、すぐそこ。